ジーコジャパンレポート

2006.6.22 敗退

日本 1-4(前半1-1) ブラジル

▽得点者【日本】玉田、【ブラジル】ロナウド2、ジュニーニョ、ジウベルト
▽会場 ドルトムントW杯スタジアム
▽観衆 65000人

日本の出場メンバー:GK川口、DF加地、中澤、坪井、三都主、MF稲本、中田英、中村、小笠原(56分・中田浩)、FW玉田、巻(60分・高原、66分・大黒)

もう1次リーグ突破の可能性は無いに等しい状況だった。2点差以上でブラジルに勝たなければいけない試合で、すでに3点のビハインド。それでも、日本代表は最後まで果敢にゴールへと向かった。後半ロスタイム、左サイドをDF三都主が駆け上がる。カウンターのチャンスに、中村と中田英が全力で駆け上がった。ニアサイドにパスが出た。中村が左足を振り抜く。しかし、空振り。相手DFにクリアされた瞬間、ファーサイドで待ち受けた中田英が大の字に寝転がった。これがジーコ・ジャパンの終焉だった。

何が足りなかったのか。最後の8分間で大逆転された初戦のオーストラリア戦。GK川口の神懸かり的な好セーブにより、勝てるチャンスも大いにあったクロアチア戦。最後まで化け物のような手強さに手こずったブラジル戦。結果的に、日本は1分け2敗の勝ち点1で、F組4位に終わった。振り返れば、初戦がすべてだっただろう。あそこで勝ち点3を取っていれば、2位通過していたのは、オーストラリアではなく、日本だった。初戦がすべてとされる中で、力を出し切れなかった日本。確かにジーコ監督の采配も的中したとは言えない。しかし、選手自身も力を出し切れなかった。不完全燃焼の思いが、それぞれの胸にはあるはずだ。

ブラジル戦では、選手は吹っ切れたように、序盤から飛ばしまくった。それまでの2試合は午後3時開始だったことで、酷暑の中で消耗が激しかった。一方、この日は午後9時開始と非常に気候が良く、動きやすい環境が整っていたこともある。ジーコ監督は日本代表を率いて以来、初めてスタメンを当日まで隠し、玉田、巻という今まで控えだった2トップを先発に抜てきして、チームにてこ入れした。これも功を奏したのかもしれない。とにかくブラジル戦では、前の2試合よりも選手は生き生きとしていたように感じられた。

最初はGK川口の好守によって、流れを引き寄せた。前半7分、ロナウジーニョから出された縦パスにロナウドが突進し、左足でシュートを放つが、川口が両手で弾いた。同16分にはロビーニョのミドルを右手でパンチング。同20分にはロナウドの右隅にねらい澄ましたシュートを、左手1本で防いだ。さらに2分後にはジュニーニョの強烈なミドルを右手の指先で僅かに触って、バーの上に弾き出した。クロアチア戦で見せた鬼神のような守備が、ブラジル戦でも続いていた。

そして、日本の番になった。前半36分、MF稲本からの左へのサイドチェンジが、三都主に渡り、そこから中央に切れ込む。瞬時に、玉田がその前方に現れた。すかさず縦パスが出る。オフサイドラインぎりぎりで飛び出した玉田はコースを確認すると、左足を一閃。これがゴール左隅に突き刺さった。GKジダもどうすることもできないスーパーゴール。日本サポーターは総立ちとなり、興奮の渦がスタジアムを包みこんだ。

この時点で、同時刻に行ったクロアチアーオーストラリア戦は、クロアチアが1-0でリードしていた。その結果のままならば、日本は2-0で勝ちさえすれば、1次リーグ突破が決まる。本当にわずかだった可能性が広がったかに見えた。今大会で、日本代表が最も勢いづいた時間帯だった。

しかし、世界王者はそんなに甘くはなかった。前半ロスタイム。左サイドにいたロナウジーニョが逆サイドにロングボールを送った。シシーニョがフリーで走り込み、三都主が懸命に守備にいく。ここでさらに中沢も同サイドにつられてしまった。ロナウドのマークが緩んだ。そこにシシーニョがヘディングで折り返す。中沢の頭を越えたボールを、フリーとなったロナウドが難なく頭で決めて、同点とされた。

その後の日本は明らかに失速した。ブラジルのペースにはまっていき、川口の神通力は消えた。途中出場したFW高原が左ひざを痛めて、すぐに交代するというアクシデントもあったが、それ以前に、ブラジル特有のパス回しからの一瞬の隙を突いた鋭い攻撃に、日本は歯が立たなかった。後半8分、ジュニーニョの無回転のミドルシュートが突き刺さり、逆転。同14分には左サイドのジウベルトがロナウジーニョからのスルーパスを直接決めて、3点目。後半36分にはロナウドがDF中沢を正面に置きながら、右隅に技ありのシュートをけり込んで、だめ押し点を挙げた。日本代表はその時点で可能性は消えていたが、個々は懸命に走り、最後まで戦い抜く姿勢を見せていた。

試合のホイッスルが鳴った瞬間、日本の1次リーグ敗退が決まった。中田英は1人ピッチ中央に10分近く横たわり、悲しみにくれた。その後引き上げたロッカールームの通路でも、泣き続けたという。

ジーコ監督が率いた4年間で、日本はアジアのタイトルを取り、W杯にも出場した。これまで世界の強豪を撃破したこともあった。一方で最後の本大会では、惨敗という結果に終わった。ジーコ・ジャパンがもたらしたものは、目に見えるものでは判断しにくい。一つだけ言えるのは、これだけ選手を信頼し、最後まで戦い抜いた監督は日本代表にはいなかったということだ。しかも、選手として一時は世界のトップに君臨したほどの人物が、日本人の力を評価し、それを世界に公言してきたのだ。それに選手たちはどれだけ応えることができたのか。

日本の今後の成長を願いつつ、ジーコ監督は日本から去る。その目には今、何がうつり、その胸にはどんな思いを秘めているのだろうか。

ジーコ監督会見

-日本サッカーへの貢献、ありがとうございます。でも、今日は厳しい質問をさせて頂きます。なぜ、日本は勝ち点1で終わったんでしょうか。選手でしょうか、監督でしょうか?
「監督が試合に勝つわけでも、負けるわけでもありません。また選手が勝つわけでも負けるわけでもありません。チームです。いつも我々は一緒です。私には責任があります。選手を選ぶという、チームを選ぶという、そしてどのようにプレーをさせるのかという責任があります。それはサッカーの一部です。我々はW杯に来た。その目標は達成した。ただ、ベスト16に行きたかったが、残念ながら第1戦、最後の8分が致命的でした。そこで我々は敗退の方向へと向かった。重要な試合で負けてしまった。そして困難な状態になった。それでクロアチア戦、ブラジル戦と戦った。我々は今日敗退したわけではない。オーストラリア戦の1-3がとても痛かった。16チームが国に戻り、16チームが残る。残念ながら相手を負かすことができなかった。みんな全力を尽くそうとした。選手たちは素晴らしかった。でも敗退することになった」

-ロナウドが点を入れたが?
「今日のブラジルはすでに決勝トーナメント進出を決めていて、平静で落ち着いた感じがした。そして選手も余裕をもって交代できていた。スピードが速く、日本はマーキングに苦しんだ。特にブラジルの選手が能力を発揮したときがそうだった。ロナウドは本当に大砲だった。ロナウドを少し放っておくだけで得点を入れられてしまった感じがする。ロナウドが私のチームにいればと思う。それだけ違いを起こせる選手です。ゴールの匂いをかぐことができる選手。ともていい位置にポジショニングをする。素晴らしい能力を持って、ゴールのチャンスがあればそれを生かす。今日のブラジルは仕事が簡単だったと思う。決勝トーナメント進出を決めていたから。我々は必死だった。2点差以上で勝たなければいけない状況だった。結果としてブラジルが勝った。後半、我々がリードして入っていければもっといい形で試合を進めることができたでしょう。でも、ハーフタイム直前にブラジルに同点ゴールを入れられてしまった。ブラジルはそれでまた余裕ができてしまった。平静なる形で後半に臨むことができた。それで我々はまたゴールを譲ってしまったわけです。日本は今日敗退したわけではない。オーストラリア戦でつまずいた。そしてすべてのそれからの試合が難しくなった。これからの試合は難しいと思う。特にアフリカのチームは強いし、ブラジルは注意が必要だと思う。なぜなら彼らは肉体的に非常に強いからです。イタリア戦でもすごくいい形でプレーをしていた。運も良かった点もあるが、ブラジルは難しいチームをこれから相手にしなくてはいけなくなる。注意しなければいけない」

-中村選手はあまり良くなかったが、なぜ残した?また日本のパスサッカーができなかったのは?
「オプションです。中村は素晴らしい選手だと思う。彼は日本に喜びをもたらしてくれるんです。確かにベストなフォームでないなら、代えなければいけない。次の攻撃の選手をいれなければいけない。だが、高原がケガをしてしまって、もう1人の選手を入れたため、交代枠がなくなったわけです。中村は信頼しています。しかし残念ながらW杯ではあまり発揮できなかったですね。肉体的な問題がありました。それはだれにでもくることです。どの選手にも起こりえること。日本のパスサッカーに関してはいくつか問題があった。たくさんミスをした。非常にやる気になっていたからかもしれない。少なくとも2点を入れなければいけなかった。それでパスをミスしてしまったかもしれない。焦りでしょうか」

-プロの将来は?
「私の日本との契約はW杯で終わります。紳士協定によってW杯までということになっています。2か月前に、日本サッカー協会と話をした。私の日本での監督はW杯までということになりました。日本はアジア杯予選を戦います。それが8月にある。すぐに取りかからなくてはいけない。私は私にもらった信頼に感謝している。この4年間、いい仕事ができたと思う。そして継続性を与えました。日本はいつもこれまでも成長してきたが、これからも成長しなくてはいけない。よりいいチームになっていかなければならない。日本はプロが始まって10年。そして今、相手の注意をひくようなチームに育ってきました。同等に戦える舞台に立てるようになったわけです。でもまだ欠点があります。そして夢もあります。今まで勝利もあれば、敗北もありました。ここにくるまで困難な道のりでした。でも、W杯には自分たちの力できたんです。私自身は自分のすべてを与え、全力を尽くした。私のキャリアは続けていく。欧州にいくかもしれない。サッカーの監督として続けていきたい」

-W杯で試合に勝てなかったのは悲しい?
「偉大な監督というのはいつも小さなチームから、小さなスタートから始まります。私の監督としてのキャリアのスタートは日本でした。W杯に出ていなかったら、やってきた仕事の成果にはならなかったが、ここまできた。これはキャリアの一つです。みんなトップから始めるわけではない。みんな小さなところから一歩一歩進めていく。日本はいいサッカーが育っています。しかし今日でW杯を敗退した。まだ成熟していないのかもしれない。今日、ブラジルに負けたわけではない。ブラジルに対しては非常に難しい。1-0で最初はリードしていた。でも後半まで続かなかった。オーストラリアの時もそうでした。82分まで勝ってたんです。でも最後の8分で3点を入れられてしまった。ということはまだまだ改善しなくてはいけないことがあるということです。だれも世界チャンピオンで始まるわけじゃない。ブラジルだってずっと進んできて4回、5回とW杯に勝ってきたんです。アフリカのチームもよく育っている。その道を日本もたどろうとしている。日本は3回目のW杯だが、2度目は開催国として出た。我々には夢がある。信頼もある。日本はいいチームだ。しかしそこには限界もある。日本が今回W杯で負けた。それに満足しているとはいわない。ブラジルとたまたま同じ組になって試合することになった。我々はこれまでの厳しい道のりを乗り越えてきた。しかし、まだトップフォームには達していない。まだ成長しなくてはいけない。世界のトップレベルのチームにはなっていないわけです。いいところもある。改善しなくてはいけないところもある。私は楽天家だ。ドイツにはホリデーできたのではない。私には仕事があるからきたわけで、いい状況もあった。でもある試合であるイベントが起きて、決勝トーナメントにいくことができなかった」

-コンフェデで2回敗退、今回も敗退。世界との差は何か?
「まずプロフェッショナリズム。自分の欠点も知らなくてはならない。それは日常のレベルで。そしてもっと大会に出て試合にするということ。外国のリーグでやっている選手は数人しかいない。その選手たちもたくさん使われているわけではない。プレーオフではその部分で苦しむこともあった。でもフィットネスで少し問題があったかもしれないが、私は信頼したから使いました。選手はリズムが必要です。いつもプレーしていることが必要なわけです。それは改善が必要だと思います。外国でプレーするということだけではない。自分のいるチームで試合に出続けるということ。もっと大会が必要だ。チャンピオンシップが。選手はもっとプロになる必要がある。そしてもっと肉体的に強くなければいけない。オーストラリア戦、クロアチア戦を見れば分かります。みんなボールを送り込んでそして体を使ってプレーしている。日本はその部分が問題です。日本の相手チームというのはいつもハイボールを送れば何とかなるだろうと思ってしまう。というのは背の高い強い選手がいるから。それは日本の伝統的な構造の中にはありません。W杯においてはとても強い選手がいる、肉体的な能力がある選手を相手にしなくてはいけない」

-勝ち点1のみ。日本の監督として成功としたと思うか?
「私は自分が成功したかどうかは気にしていない。ただ自分の仕事をしようとした。それをだれが判断するか、日本サッカー協会の会長、ファン、マスコミのみなんさんということになる。私自身が判断することではない。W杯は望んだ結果は出なかった。こういう結果になってしまった。自分の評価は気にしていない。前回のW杯のことも気にしていない。2002年の時にもW杯に勝ったわけではない。勝っていたら、前のW杯と比べてどうかと言うことができたが」

-思い通りにできた?それとも不測の問題が起きたか?
「このW杯はたくさん問題があった。特に選手の肉体的な状況です。ドイツに入ってからのこの4、5週間、23人の選手全員で練習したことはない。だれかがケガをしていた。第1戦、坪井を失った。重要な選手を重要な時間帯で失った。ドイツ戦でも高原に問題が起きた。中村も同様で練習に出てこれなかった。また熱もあった。先週は何らかの形で練習にフルに参加できなかった。それがアスリートの肉体的な能力を奪うことになった。23人が全員元気でいたら、よかったが、でも選手の故障、病気でリズムが崩れた。また3時の試合があった。非常に暑かった。それがまた肉体的な問題を起こした。3時の試合が2つもあった。それで生理的な部分、食べ物に関しても変えなくてはいけなかった。勝っているときは簡単だ。すべて順調にいっていると言えばいい。でも負けてるときは何が原因か探さなくてはいけない。日本は今回、数週間困難な状況にあった」

-準々決勝のラインナップの予想は?
「どのチームが準々決勝に出るかは予想できない。いくつかの試合はみた。ドイツは批判を浴びていたが、よくなっている。大きな進歩を遂げた。ブラジルは優勝候補だが、まずベスト16に入った。4週間前にここにきてバランスがとれていた。特に意外な注目を引いたチームはない。ハイボールを使っているチームは相手のミスに頼る部分、また相手の感情的な部分に依存しなければいけない。しかし決勝トーナメントは1回負ければ終わり。肉体的な部分、そして交代選手もきちんと整えなければいけない。イエローカードの問題もある。そういう問題が一番少ないチームが可能性が最も高いでしょう」

-アルゼンチンは?
「特に大きな印象は受けていない。すべてのチームにチャンスがある。例えばチェコだが、ガーナに負けて絶望した。0-2で負けた。ガーナはたくさんチャンスがあって、0-4、0-5の可能性もあった。素晴らしい選手がいて素晴らしいチームなのに敗退してしまった。日本と同じようなもの」

-オーストラリア戦の最後の8分を防ぐことはできなかったか?小野選手の投入じゃなくて、2戦目に大黒を使ったように、相手のエリアでプレーすることを作ればよかったんじゃないか?
「伸二を入れたのは1-0のときですよね」

-柳沢選手が走れてなかった。
「それはできたと思う。ただしそれだけのオプションではなく、ほかのオプションもあった。確かにそれも頭をよぎったが、あの日は今日のブラジルのような中盤にしたかった。やはり今までの数試合も伸二を投入することで他の中盤が楽になる。持ち味であるキープを狙った。今日、ブラジルが日本に対してやってきたようなサッカーを狙ったわけです。今日の交代は大黒を入れた。大黒は予選でゴールを決めている。しかし、それがすべての試合で決められるかといえばそうではない。選手のせいでもないし、自分たちのオプションが間違っていたとも思わない。ただ、今日のようなブラジルのサッカー、中盤で回せるサッカーをやりたかった」

-巻、玉田を入れた?
「2試合やって全然点が取れない。やはり玉田、そして巻のハイボールの強さ、クロスに対する感覚の良さ、そこを狙った。玉田の1点目もあった。ある時は成功するときもあるし、あるときはうまくいかないときもある。たまたま今日は半分しかできなかった」

-今回は先発を隠した。今までもそうしようとは思わなかった?
「それもタラレバの話。自分が実際に必要性を感じなかったからやってこなかった」

-でもヒディンクやクラニチャルは日本がどうやってくるのかをすべて知っていた。
「やはり今まで70試合以上やってきた。それで成功してきた。逆にそれで戦術を読まれたこともあるかもしれない。でも日本にとってその必要がないと思っていた。奇策は一瞬は通じても1試合は通じない。そう判断したから正々堂々いくという道をとった」

-今日も前半終了間際とか後半開始すぐといったサッカーで言われている危ない時間帯に失点している。それは経験か?
「例えば実際にあの点はいらなかったとは思う。キープしているところで選手の気持ちから攻めようというところからボールを奪われてああいう形になる。選手にはいっているが、どういうシチュエーションに置かれているか、何をしなくてはいけないか、自分たちの中で突き詰めて練習してきたつもりだが、試合でそれがでなかった。これから実際にこういう部分を学んでいかなくてはいけない。まだ日本人はグラウンドのすべての部分で同じプレーをする。技術的にすごく上がっているとは思うけど、試合に勝ちに持っていくための試合運びをもっと学んでいかなくてはならない。今日のブラジルがやったみたいに。あのサッカーが自分がやりたかったサッカー。相手のメンタル部分をいじるようなパス回し。それを目指していたが、できなかった」

-それは経験?
「経験です。これは経験です」

-強い相手と繰り返さなくてはいけない?教えられない?
「教えられない。教えられるだけでは学べない。やっぱりそれが相手がないところではできるが、独特の雰囲気で相手がいる中ではミスがでる。それによって今日のブラジルのような相手にどんどん攻められる。やっとボールを奪っても今度は攻めなくてはいけないということで、縦に急いでしまう。バスケットは何秒で攻めなくてはいけないというのがある。しかしサッカーはない。どうしても縦にメリハリなくて急いでしまうと相手にとっても簡単になってしまう。それをサイドを刻んで変えながら、あるいは一発で変えながら、相手の目先を変えていかないと。そういうプレーが実戦で難しい」

-4年間で日本が進歩したことは?
「結局どんな相手でも名前負けしないという選手の気持ち。自分たちのサッカーがしっかりできれば互角以上に戦えるんだという自信を持ってくれたこと。プロとしての意識、シチュエーションによっていろんなサッカーをする。フィニッシュの問題。これは一つの焦りというか、練習ではできるけど、なぜ大事な大会になると焦りがでるのかということも含めて」

-ロッカールームでは選手に何を?
「まだ何も言っていない。ホテルでいう。個人的に何人かとは話したが、全体的には声をかけていない」

-中田英寿選手が試合後ピッチで10分以上動けなかった。
「まあ、他の選手も同じだと思うが、彼の場合、本当にこのW杯を成功させたい、日本にとっていい大会にしたいと思って力を出してきた。それを出し尽くしたんでしょう。彼と仕事ができたことは光栄だと思うし、プロとして立派な選手だと思うし、ただ、それ以上に人間としてこれから友人としてこれからも付き合っていくと思います。大切な友人の1人として。今日みたいな結果、彼も、だれも予想しなかったと思うんですけど、そのショックもある。こういった後では出し切ったあとでは何もできないのはよく分かる」

-プロの意識はどのようなこと?
「本当にクラブで所属している中で、練習、試合にすべてを出し尽くすということ。それぞれが自分の課題を分かっているわけだから、通常の練習以外にもそれをどんどん追求していく。これで飯を食っているという意識ですよね。常に上を狙いながら、代表にきたときだけ一生懸命やるんじゃなくて、それぞれのクラブで自分の課題を改善していかないといけない。というのはクラブで過ごす時間が多いわけだから。それを考えるとこの4年間、成長した選手、そうではない選手、もっと成長できたと思う選手、いろいろいる。それは意識の持ちようだと思う。何度も彼らに話したが、とにかくW杯で成功するためにはアジアでやっていた以上のものを出さなくては、絶対に成功できない、ということ。あれから1年くらいあったが、フィジカル的な強さ、プラス自分が足りないと思う技術な部分、それをクラブで培ってほしいといったが、数多くの選手がそれを実行してくれたと思うが、今ひとつ足りなかったという選手もいる。この歴史の少なさの中で本当にW杯に行くんだという気持ち、非常に軽い気持ちで来てしまった選手もいるかもしれない。で、これだけ厳しいことが起こるとわかっていれば、すべての人間が鍛えてきたと思うがその辺が経験の少なさ。アジアと同じレベルじゃだめなんだと彼らに言った言葉は間違ってなかったと思うし、中田はそれが分かってるからこそさらに鍛えてきた。限られた時間の中でやってきた」

-あと何年くらいかかる?
「10年、15年とよくいいたがるが、テレビとかラジオを組み立てるというのとは違う。人間を扱っているのだから、経験の種類、日本のサッカーにおこることをうまく糧にしていかないと。すごく時間がかかることもあるし、短いこともありえる。問題は選手同士の声の掛け合い。日本の文化というか、けんかをしないで仲良くなるというか別にけんかをしろといっているわけではない。今ひとつ元気のないチームメイトに他の選手がはっぱをかける。そういう部分でお互い厳しく付き合っていかないと。仲良しチームではW杯ではなかなか成功は難しい。この意識を持っている選手が多ければ多いほど日本は成長する」

-すべての戦いを終わって失望は?
「非常にこういった結果になってさみしい。すごく信じてきただけに。このゼネレーションはものすごく日本のサッカーを変えられるというチャンスがあったと思う。それだけに、それがなされなかったということはさみしいし、残念に思う。しかし、ここで下を向いて駄目なんだと思ったら、人間は絶対に成長がない。これだけ質をもっているのだから、それを出さないと前に進めない」

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