ジーコジャパンレポート

2006.6.11 世界を驚かす結果を

いよいよ決戦が翌日へと迫った。ジーコ・ジャパンはこの日、オーストラリア戦の試合会場となるカイザースラウテルンで調整を行った。強い日差しが照りつけ、真夏のような暑さとなる中、選手たちはいつもと変わりない試合前日のメニューをこなしていった。

午後1時から始まり、きっかり1時間。アップから始まり、フォーメーションを組んでのパス交換、ミニゲーム、そして各自の居残り練習で終わった。右足首を痛めている加地だけが別メニューとなったが、それ以外のメンバーに変わりはない。予想先発は以下の通り。

GK川口、DF中澤、宮本、坪井、MF三都主、中田英、福西、駒野、中村、FW高原、柳沢(3-5-2)

前日の記者会見ではジーコ監督が自信をみなぎらせた。決戦への準備が整った証拠だ。

ジーコ監督に聞く

「サッカー選手を志す者、あるいはサッカーに携わる者にとって、W杯に出場できることは誇りであり、サッカーにかかわるすべての人々の夢でもある。そのために4年間、日本もトレーニングし、厳しい大会や予選を乗り越えてきた。そのW杯が明日の試合で始まる。今のチーム状態はいいし、強い気持ちで試合に臨みたい。これからの3つの試合でいい試合ができるかどうかで、次のステージに進めるということを考えると、初戦の大事さは今さら言う必要もない。勝って勢いをつけたい。今まで強いチームと対戦してきて、いいサッカーができる自信もあるし、気持ちを引き締めることによって、チームの状態も良くなる。準備は整っている。オーストラリアは一昔とは違い、ビッグクラブで活躍している選手も多いし、修羅場をくぐってきた経験豊富な選手もたくさんいる。まさに強豪だ。気を抜くことなく、しっかり自分たちのサッカーをしていきたい。それによっていい結果が出ると確信している」

-オーストラリアの出方についてはどう思う?
「オーストラリアは経験豊富な監督に支えられている。相手が攻撃的にきても守備的にきても、どちらでも対応できるようにするし、どちらも考えておかなければいけない。ただ、攻撃的な選手が多いとも言えるけど、こればかりは、ふたを開けてみないと分からない。システムにもよるが、オランダ戦で見せた形が予想される」

-試合会場のピッチはどうか。
「もし自分がプレーするなら、芝のコンディションはとてもいいと言える。しかし、日本の選手たちが慣れている芝よりも多少長くて高いので、ボールのスピードに変化がある。そのため、できるだけ強くボールを蹴るとか、しっかりとボールをとらえたプレーをしなければいけない。それを確認するためにも、今日はいろいろと試した。選手たちは明日、その特徴を踏まえてプレーしなければならない。先日のマルタ戦のピッチと同じような感じだと思う」

-監督として初めてW杯を迎える。その心境は?
「正直言って幸せだ。どの代表監督も望むことだが、日本の代表監督になってから、4年間チームの指揮を執ることを全うできた。4年間、やることはすべてやってきて、予選を勝ち抜いて出場権も得て、結果も出してここまで来た。自分たちが目標としている高いレベルのものを追求していきたい」

-オーストラリアで警戒すべき選手は?そこにどう対応するか。
「それが戦術的な意味で言っているのであれば、攻撃的ないい選手はたくさんいるが、うちは特定のマークはつけない。彼らのプレーを見ていると、チーム全体としてどう対応するかを考えた。うちはいつものやり方をする。特定の選手に特定のマークをつけることはしない。オーストラリアは、ビドゥカに当てたボールや彼が競って落としたボールに対し、非常に多くの優秀なプレーヤーが飛び出したりして仕掛けてくる。しかし、そのことへの対策は十分できている。オーストラリアは何人かの選手がビッグクラブで活躍している。交代出場した選手がいきなりゴールを決めることを考えると、ベンチも充実していると思う。そう考えると非常に強いチームだ。しかし、自分たちは自分たちのやるべきことを、今までやってきたことをしっかりと行うだけだ」

-オーストラリアも日本も中盤が強い。中盤の出来がカギを握るか?また、キューウェルへの対応は?
「両チームともいい中盤なので、われわれの中盤がいい形を作り出した場合、それが起点となってチャンスがうまれたり、点が入ることもあると思う。うまく機能すれば、中盤の選手が試合を決めることもあるだろう。キューウェルは最大限の注意が必要な選手だ。いきなり出てきてワンプレーで試合を変えるし、ゴールを決めてくる。しかし、われわれはバラックやベッカム、ロナウジーニョ、カカらとうい選手と対戦し、抑えてきた。注意はするが、初めてそのような選手と対戦するわけではない。もちろん、キューウェルは非常にいい選手だし、オーストラリアのスターであることは間違いない」

-明日はどういうミーティングで、選手たちをどのように送り出すのか。
「W杯の初戦ではあるが、特別なことは考えていない。今までの集大成の大きな大会だが、強豪相手の対戦の時でも、その都度、どのような準備をして、どのような戦い方をするかを選手たちに説いてきた。日々やってきた練習の内容や彼らとの対話は非常に充実していると感じるし、選手たちがそれを実行してくれたので、ここまで進んでこられた。だから、明日も特別なことはしない。日々の集大成と考えてもらえればいい」

-ブラジル国内でもジーコ監督への応援がある。選手時代とは気持ちの部分でも違うか?
「この日のためにやってきた。いよいよそのW杯が始まるということで、わくわくしている。日本代表の監督になったのは、自分が選んだ道。母国ブラジルの国民や、自分がプレーしていた国のサポーターから応援してくれることは歴史的にも今までなかったこと。世界が日本に対する関心を持っていただけるようになった。日本という存在が、世界に知られるようになるのは素晴らしいことで、同時に責任も感じており、身が引き締まる思いがする。4年間仕事をしてきて、私が伝えられるものは教えてきたし、それだけの経験も残してきた。W杯でアジアを飛び越えた結果を残すことが、日本に足りない部分。それに向かってまい進してほしい」

-けが人については?
「明日は唯一、加地だけがプレーしない。だいぶ回復はしているので、第2戦のクロアチア戦までにはコンディションを整えてくれると思う」

-今日のトレーニングを見て、選手の状態は?今まで最も印象に残っていることは?
「選手には過緊張もないし、いい状態で明日を迎えられると思う。今まで一番強い印象に残っているのは、イランの敗戦(05年3月)。あの時は世間からたたかれ、自分たちのやっていることが間違っているのでは、と問われた。だがスタッフや選手たちは、自分たちのやっていることが間違っていないと信じ、信念を持ってくれた。その後、歩むべき道を貫いて勝ち、ここまでたどり着いた。あの時が一番きつかった。W杯にいけるかどうかの分かれ目で、あの次のバーレーン戦は、負ければすべてが終わるという状況だった。しかし信じてやってきて、ここに来られた。いろいろとあったが、必要な出来事だった」

-W杯予選の突破が決まったときに、世界を驚かせる結果を残したいと言っていたが、その気持ちに変わりはない?
「みなさんにいつも言っている通り、どんなに世界の強豪と言われているチームでも互角に戦える実力は備えている。それは証明してきたし、今回はこの場で見せられれば。そのために練習してきたわけだから。その気持ちは変わっていない」

-具体的に日本代表のここをアピールしたいというのは?
「一番望むのは結果を出すこと。結果を出さないと、いいものを認めてもらえない」

-W杯は勝つための大会ということか?経験が大事とかも言うが。
「確かにそういうものも大事だが、最後は結果だということ。色んなものが重なって結果として出るわけだから。だから非常に難しい部分はある。精神的な部分、技術的なもの、体力なものをどうやって持っていくかということもある。やっぱり選手の調子もあるし、もしその日ボゥーっとしていれば、良さもでないし、本当に充実した中でやってほしい。ボゥーっとするのは敵でたくさん。そういう部分もある。色んな要素が絡まって、結果が出るわけだから。このジェネレーションというのはね、やっぱりすごい。あとの日本のサッカー史にとんでもないことをやったチーム、いいチームという以上の評価を残せるかもしれない。そういう状況のジェネレーションなわけなんだ、今は。それを自覚してやって欲しいなと思う」

-91年に日本に来日し、02年から監督をやったわけだが、いつくらいから日本の選手が世界に匹敵するんだという確信を持つようになった?
「いつって言われても難しいけどね、でもだいぶ早い時期からやるんじゃないかという感触は持っていた。ちゃんとした仕事をやっていけば、このチームは絶対いけるぞっていう確信があった。逆にそれがなければ監督はやってない」

-監督を引き受ける時はそういう確信があった?
「少なくともそういう風に欲していた。やはり今まで見ていて、自分たちより格上だと思うと、それがゲームの結果を左右してしまっていた。こういうことはこのチームには絶対に起こって欲しくない。よく例に出すが、アフリカチームがこれだけ発展してきたというのは、今はアフリカ勢というのは立派な勢力だけど、なぜこれだけ認められるかと言えば、W杯で成績を残したからだ。セネガル、ナイジェリアといった国々が大会で結果を残した。アジアがこれから第2のアフリカになるためには、大切な大会で結果が必要なんだ。そういう時期にきている」

-91年に鹿島に来たときに、こういう日がくるとは思ってもみなかった?
「絶対にないね。それはないでしょう。少なくとも監督になろうなんてこれっぽっちも思ってもみなかった」

-シュートへの姿勢は練習で見れるが。
「練習のたまものだと思う。ゲームで決めて欲しいと思うね」

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