ジーコジャパンレポート

2005.9.7 ホンジュラス戦

日本 5-4(前半1-3) ホンジュラス

▽得点者【日】高原、柳沢2、中村、小笠原、【ホ】ベラスケス3、マルティネス
▽会場 宮城スタジアム
▽観衆 45198人

日本のメンバー:
GK楢崎、DF加地、中澤、宮本、三都主、MF稲本(64分・小笠原)、
中田浩、中田英、中村(87分・田中)、FW柳沢(71分・玉田)、高原(79分・大黒)

凄まじい逆転劇が宮城スタジアムで繰り広げられた。過ぎ去ろうとしてる台風14号に触発されたのか、試合は大荒れとなった。開始から失点を続けた日本は三度、2点差リードを許すが、ホンジュラスに最後に追いつき、追い越した。信じられないような光景だった。
欧州組6選手を呼び戻した日本は4-4-2のシステムで試合に臨んだ。ジーコ体制でいまだ勝ち星のない中南米(4分け6敗)に対してどこまでできるのか。来年のW杯本大会では1次リーグで必ず1か国は同組になることが予想される。このタイミングでのテストマッチは意義あるものだった。しかし、開始から日本はリズムをつかめない。本番に向けてのシミュレーションどころか、ミスが多く、劣勢に回った。すでにW杯出場が消えているホンジュラスが予想以上のスピードとテクニックを持っていたということもある。それにしても、サイドを崩される場面が目立った。
前半8分、日本の左サイドにゲバラからスルーパスが送られた。三都主が懸命に追ったが、競り合ったマルティネスに呆気なく当たり負け。グラウンダーのクロスを許し、ベラスケスに押し込まれた。続いて27分、再び左サイドだった。ボールを持ったガルシアに三都主と中村がマークにいく。しかし、その間にあっさりとスルーパスを通され、ベラスケスが一気にDFラインの裏に抜けた。ベラスケスと対面していた宮本は何も出来ずに突破を許してしまった。これで2失点目。目を覆うようなシーンだった。
前半33分、ようやく日本も反撃の口火を切った。中田英からパスを受けた稲本が強引にミドルシュート。これがDFに当たり、高原の足元にこぼれた。瞬時の場面にも高原は絶妙のトラップで前に運ぶと、左足のアウトサイドで間髪入れずにシュート。飛び出したGKモラレスの左を抜き、1点をもぎ取った。
ここで追い上げムードが漂ったが、前半ロスタイムに再び突き放される。中田英が自陣中央でゲバラにインターセプトを許した。信じがたいミス。これが起点となり、最後はマルティネスに決められ再び2点差。悪夢だった。
前半を1-3。この点差は両者の出来を如実に表していた。ホンジュラスは余裕のあるパス回しでゆっくりと攻めどころを探し、機を見ては日本の急所をついてきた。ボランチをサイドにつり出し、宮本、中澤のセンターバックを丸裸にして、数的優位な状況を各所で作り出した。日本はこれに対処できず、防戦一方の場面もしばしば。
それでも後半は日本の中盤が守備のバランスを取り始め、ようやく流れをたぐりよせた。後半3分に柳沢、5分にベラスケスがそれぞれ加点し、2-4。ここからだった。同10分、宮本が相手ペナルティーエリア内で倒され、PKを得ると、中村がきっちり決めて三度1点差に詰め寄った。さらに同25分、柳沢がドリブルで切れ込み、20メートルのミドルを左隅に決めて、ついに同点。同33分には右サイドにいた中村のサイドチェンジから中田英、玉田、三都主と流れるように展開し、最後は中央に走りこんだ小笠原が右足のインサイドで落ち着いて逆転弾をゲット。宮城スタジアムは絶叫と歓声に包まれた。
日本はそのまま5-4で勝った。初めて中南米の相手に対して白星を挙げた。しかし、課題も山積みだ。後半42分、田中を投入した時点で3-5-2へとシステムを変更しているが、選手からは3バックのほうが守備の形が明確になるという声も挙がっている。一方で攻撃面では4バックでまずまずの手応えをつかんでおり、現時点では一長一短。中南米特有のボール回しに同対応していくのかもまだまだ未知数だ。来年、日本がドイツで世界を驚がくさせるような結果を残すためには、これからさらなる飛躍が望まれる。

ジーコ監督のコメント

「久しぶりに最後まで点の取り合いになる、エモーショナルな試合だった。この時期、国内の選手は厳しい日程でリーグを戦っていて、欧州の選手はシーズンがスタートしてアピールしていかなければならない。今回も中1日の調整で試合に臨まなくてはならないという試合で、よく戦ってくれた。内容は、このメンバーで初めての部分もあるし、コンディション的な難しさというものもあって、通常では考えられないようなミスもあったりしたが、そこであれだけの点差をひっくり返すような気持ちの強さという、うちの特徴が出て、勝利を収めることができた。また、どんなに点差が開いてもお客さんが最後まで声を枯らして応援してくれて、それにチームが応えるということで印象に残った試合だった。前半から比べれば、後半はかなり改善された部分もあったが、やはりコンディションの不調がたたって、今まで見られなかったような展開になったが、最後まで試合を捨てなかったということは評価できると思う」

-90分間集中するという点に関しては?
「これだけ失点したのは、以前にアルゼンチンに4点、ドイツに3点取られたことはあったが、それ以来だと思う。昨日の会見では「ミスを減らす」ということをいった。だが今日の中盤でいえば、中田英は本来の調子ではなかったし、中田浩にいたっては(マルセイユで)色んなポジションで使われている。稲本にしても試合のブランクがある。高原も中村もシーズンが始まったばかりということで、かなり後ろもアップアップしていたが、そういった状況を考えれば、気持ちの部分では評価できると思う。ベストの状態でミスが続けば困るが、この時点であれば次の試合でいい意味で活用できると思う。今日評価してもらいたいのは、あれだけの点差を引っくり返したこと。自分も15年、日本のサッカーを見てきたが、こういう試合はなかったと思う。もう駄目だという状況、足も動かないという状況の中でも「何とかするんだ」という気持ちの強さについては評価できると思う。この気持ちの強さがあれば、どんな形になってもはね返せると思う。そういえば今思い出したが(昨夏のアジア杯の)バーレーン戦でも3点取られて4点入れたということがあった。今日の相手も、確実に決めてきたということは、評価しなければならないだろう」

-フォーメーションのバリエーションに関しては?
「まず、今日の中盤の組み合わせは初めてのトライだった。ボールを持ったときには想像力を生かしてうまくいくのだが、ボールを失ったときに2トップを含めた中盤での形というものをトライした。コンディション的な問題もあったが、やはり相手のカウンターの速さ、個人の能力の高さということで、彼らはワールドカップ予選も終わったばかりということでガンガン攻めてきて、それに対してカチッと守るのは厳しかったと思う。そういった自分たちがトライしていることがなかなかできない時でも、精神的な強さというか、前が駄目なら後ろがカバーするとか、後ろが駄目なら前とか、周りの人間の意志、決断力の強さというものが再認識できた。もちろん、トライしたことすべてがうまくいかないのはサッカーの常ではあるが、次の試合ではもっと中身の良い、そして結果を出していかないといけない。そうでなければ、今日の勝ちの意味もなくなってしまう。相手の出方については、最近の試合を見ていて、やはりカウンター狙い。そのカウンターも早いし、ボールを持ったときも強い、という部分で点を取られてしまった。そこがこれからの課題だとは思っている。逆に小笠原の得点、昨日の2タッチの練習の前にやったうちの形だが、あれが見事に決まったということで、あの足がなかなか動かない時間帯で、頭の中にイメージがあったということが収穫だったと思う。それとうちのリスタートのとき、相手は高さはあるが、どうしてもボールにいくタイミングやポジショニングの悪さで、こっちが点を取りやすいということを選手たちも覚えていて、そこで点が取れたのも収穫だった。それ以上に今日はお客さんと一体となって勝利をもぎ取ったということが、非常に大きな収穫だったと思う」

-序盤での2失点はメンタル的なもの?
「相手が強ければ強いほど、最初は引いて出方を見るということは、うちには合わない。コンディションや連係がよければ、前からどんどん行ける。ただ0-2、0-3というのは、うちのサッカーではあまりないということで、もし相手が相当に強くて点差をつけられてしまったというときに、今日のようなケースではどうするか。まず、絶対に焦らない、バランスを崩さない。そこで無理して取りにいってしまって、間延びした状況になってしまったら、相手にボールを取られて回されて、確実に3点目、4点目を取られてしまう。これはやはり子供のサッカーなのだと思う。今日は、1点を返した。そこで有頂天にならずにバランスを崩さず、最後まで乗り切るという必要性を選手たちも感じている。逆に先制した場合、バランスを崩さなければ確実に追加点を狙える。精神的な面を含めて、前後、左右のバランスを意識するように指示はしている。たとえ先制されても、必ずチャンスは来るんだと。その時に確実にチャンスを決めるんだ、ということで、そのあたりの部分でチームが進化しているのではないかと思う」

-小笠原が投入される前に中田浩が下がって中盤がダイヤモンド型になっていたが?
「最初はボックス型にしていたが、どうしても相手の攻撃の勢いがあって、どちらかというとボランチの裏で相手がボールを受けて、ディフェンスラインも出て行けない状況というのがあった。いつも指示していることだが、同じポジションの場合、つるべのような形で浩二がいくときには稲本が下がる、稲本が上がるときには浩二が下がるということで、常にどちらかがカバーに入っているというような形でやるのが理想的だ。だが、どうしても相手がボランチの裏でボールを受けるので、守備的にいい浩二を少し下げて、どちらかというとひし形の形になった。それから、中田英もずいぶんと足にきていて、小笠原が入った後には中田英が下がり気味のときもあったし、とにかく臨機応変に、ボランチの裏にいる選手を必ず誰かが見ているということで、ハーフタイムに指示をした」

-10月の遠征に向けた課題は?
「2試合あるうち、第1戦(ラトビア戦)はオールスターとの絡みがある。オールスターはファンから選ばれた選手が出場する大切な試合なので優先する。やはり欧州でプレーしている選手を中心に組むことになるが、後ろがどうなるかという問題はある。それから5日にナビスコカップがあって、そちらも優先するということも考えなければならない。2戦目(ウクライナ戦)は全員がそろうということで、そのときに小野伸二が帰ってきてほしいと思う。彼がいることでできるトライもある。実際に置かれたシチュエーションに応じて、できるだけ多くのものを選手とともに集中しながらやっていきたい」

-ハーフタイムまで静観していた意図は?
「経験からいって、あのように前半から0-2になるとは想像もしていなかった。自分は選手時代、いろいろな監督の下でプレーしたが、あのような状況で横からがなりたててしまうと、選手としては「うるさい!」という感情になってしまう。「落ち着け、落ち着け」とがなりたてても「どっちが落ち着けなんだ」というような状況に選手を置きたいとは、絶対に思わない。やはり選手に対する信頼というか自信、何とかできるというということ。正直に言うと、最初に0-2になったときよりも、1点を返してロスタイムでまた1点を入れられたときの方が、ショックは大きかった。いい感じで点を取って、乗り切らないうちに決められてしまった。時間的にも厳しい部分があった。ハーフタイムで言ったのは「何点差になってもバランスを崩してはいけない」、「バランスさえ崩さなければ、必ずチャンスは巡ってくる。チャンスを確実に決めよう」。そこでバタバタしてしまって、間延びしてしまって前と後ろの連係がまったくない、中盤がざっくり空いてしまうということになってしまえば、それが一番怖い。だから自分が出て行ってがたがた言っても、そういうことになりかねない。選手としても何とかしなければならない、監督も焦っている、そうなるとまったくゲームを台無しにしてしまう。それがいいか悪いかはともかく、それが自分の経験に基づく主義、やり方なので、それは最後まで貫きたいと思う」

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