ジーコジャパンレポート

2005.3.30 W杯アジア最終予選、日本ーバーレーン戦

日本 1-0(前半0-0) バーレーン

▽得点者 オウンゴール
▽会場 埼玉スタジアム(観客61549人)

刻々と刻まれる時間。日本代表はバーレーンの堅守を前に攻め手を欠いた。試合の主導権は握った。相手のチャンスもほとんどない。前半、ペナルティーエリア付近まではいくが、それより先で、得点機を生み出すには至らなかった。
日本の勝ち点は3、対するバーレンは4。ホーム戦を落とせば、W杯出場に黄色信号が灯る。3月25日のイラン戦から、システムを変更し、4-4-2から3-5-2となっていたが、攻撃的な姿勢は一貫して同じだった。だが、バーレーンもそれを十分予測していた。1トップ気味の布陣で守備に重点を置いた。ゴール前に7人が固まることも珍しくない。明らかに引き分けでも良しとする戦術を敷いてきた。
前半は日本も固かった。ミスも目立ち、思い切ったトライも少なかった。引いている相手に対しミドルシュートもなかなか打てない。45分で放ったシュートは3本。高原と鈴木の2トップは1本のシュートを放つこともできなかった。加えて、得意のリスタートも跳ね返された。前半だけで中村が11本の直接FKとCKを放り込んだが、得点につながらず、0-0で折り返した。
後半、やや固さがほぐれただろうか。特に中村の効果的なボールが増えた。中田英もメリハリのあるプレーが増え、FWにくさびのボールが入った。同16分、中村から左サイドを駆け上がった三都主にパスが通り、最後は高原が左ボレー。決定的なシーンだったが、シュートは枠を超えた。
負ける要素はほとんど見えない。しかし、決定機を欠く。そんなもどかしい展開が後半26分、突拍子もないプレーで解消された。中村のFKがバーレーンのゴール前へ。宮本が折り返したボールが相手MFサルミーンにこぼれた。すかさず、中沢がプレスをかける。コーナーに逃げようとするサルミーン。しかし、ボールを蹴る瞬間に、足元が狂った。ゴール左隅に突き刺さる、まさかのオウンゴール。
この1点で、日本は勝利をもぎ取った。内容がよくても、結果が出なければ意味がない。この日の試合は勝ち点3こそがすべてだ。同日の試合で北朝鮮を2-0で下したイランが勝ち点7で予選B組1位。次いで日本が勝ち点6で2位に浮上した。2位までが自動的にドイツW杯本大会への出場権を得るレギュレーションで、その2位以内をキープ。ようやく前半戦が終わったW杯予選。残り3試合はアウエーが2試合と厳しい道のりは続くが、この日の勝利で目標に近づいたのは確かだ。

ジーコ監督のコメント

-今日の感想は?
「本当にタフなゲームだった。W杯予選は全部タフだが、アウエーとホームの差がほとんどないといえるくらいの状況だ。選手が全身全霊をピッチにぶつけてくれて、勝ち点3を取ることができた。自力でW杯にいける状況が続いていることを喜ばしく思う。選手の気合の入った戦い方に満足している」

-後半流れが良くなったが、ハーフタイムに指示したのは?
「前半から相手を押し込める気迫があった。後半になってスペースが空くのは分かっていた。サイドを中心に押し込みながら、1対1で勝負しようとするときに、フェイントの間合いから相手に引っかかることが多かったので、1歩、2歩前でいけば抜けられるといこと。あとはボールに競ってやろうということ。また、相手は1本のカウンターを狙っているから集中しようということを伝えた」

-リスタートは研究されていた?
「本当に今日はそれを感じた。あれだけリスタートがあれば、相手の守備陣形が崩れたり、うちにこぼれ球がきたるするのだが、相手は崩れずに向かってきた。特にニアの強さがあった。だが、これだけの数をクリアされることは少ない。工夫をしてこれを繰り返せば、前のように点を取れるようになる」

-試合中に宮本や福西に指示をしていた。何を?
「短い時間だったが、相手の10番が前に張っていたので、だれがつくのかということで福西が見ることを伝えた。あと相手がロングボールを狙うだろうということと、うちが弾き返したら、こぼれ球も拾おうということを確認した。それから前線の動きを見るように精神的状態を保て、と」

-運も実力のうちというが、運の勝利か?実力の勝利か?
「オウンゴールであっても、あそこでうちがプレッシャーをかけなかったら果たしてゴールが生まれただろうか。選手がゴールを意識した結果、生まれた得点だ。立派な1点だし、みんなの気持ちが乗り移った1点と言える。どんなボールでも前に蹴ることになれているDFにとって効果的なプレッシャーをかけることで、自分がどちらに向いているのか、頭がぼやけることで、ああいうプレーが生まれることがある。常に相手の弱みを突いていくことの大切さが浮き彫りになったゴールだ」

-埼玉という土地も運がいいと感じるか?
「ついているという言葉が正しいのか。確かにピッチもいいし、サポーターもピッチに近い。だが、ここだけではなく、中国でも厳しい状況を勝ち抜いている。どこのピッチでもみんな集中することで勝利が転がってくると考える。チームの戦いぶりの結果だ。どんなにコンディションがよくても、気持ちが薄ければ勝利は転がってこない」

-今後については?
「まずは今日の喜びに浸りたい。明日以降に考える。まだ次に誰を呼ぶかも考えていない」

-前半にはシュートまで至らなかったが、慎重に入ったのか。
「バーレーンの守備が堅かったといこと。特に中央を固めてきていた」

-もう少し早い選手交代は考えなかったか?
「自分の試合の流れを読む上での判断だ。前半、FWはシュートまで至らなかったが、では動きはどうだったか。高原は相手にとって嫌な動きをしていた。スペースを空けたり、振り向いて突っ込んでいったりして、相手の守備がバタついていった。鈴木は怪我から復帰したばかりだったが、本来の出来ではないにせよ、彼の良さは出ていた。高原はシュートまで持っていけるという確信があった」

-交代はプラン通り?
「色々な状況があった。鈴木の場合は非常に複雑。リハビリを含めてこの試合に向けて厳しいトレーニングを積んで来た。彼の踏ん張りがあって生産性もあったが、前半に見せていた生産性が落ちてきたので玉田と交代した。玉田は縦に行く速さと逆を突く早さがある」

-3バックに戻して手応えをつかんだ?
「この前も言ったように、もし田中が出場停止じゃなかったら、イラン戦も3バックだった。前のほうは欧州組を含めた組み合わせでやれると思ったが、後ろはかなりやれるという感じがある。中沢、宮本、加地、三都主、田中の5枚に関しては連携がいい。あえて崩してまで4バックをやらないが、イラン戦は田中がいなかった。ただ、3バックだったから今日の結果が出たのではない。1対1などで戦う姿勢が出ていたから今日の結果が出た。戦術やシステムうんぬんで勝つのは難しい。どんな試合でも気持ちの強さだ。気持ちの強さを全ての試合で発揮してくれれば確実に勝てる」

-試合前、勝利の確率をどう考えていた。
「100%だ。常に100%。負けることに慣れてほしくない」

-後半、三都主に指示を出してから、中村との連携もよくなった。
「ミーティングでも言っていたが、両サイドの攻撃のバランスが大事だった。右の加地が崩す場面が多く、三都主にもっと積極的に攻めるようにと言った。相手も三都主を意識している部分もある。辛抱強く続けていこう、と。あと前半から中村がFKを蹴っていたが、どうしても低くて簡単に弾かれていた。1本でも2本でも三都主が蹴ることで変化をつけることができると思い、指示した」

-後半スペースができると思っていたようだが、早めのクロスがそれを可能にした?それは指示か、それとも選手たちが率先して?あと、気持ち以外の部分で評価すべきところは?
「まずスペースの問題だが、自分たちの前半のリズムで攻め続ければ、必ずスペースができると思っていた。選手もそれを守り、長短のパスが出てきていた。あと、どちらかというと精神面の強さが基本にある。W杯予選を戦っているという気持ちで1対1にせりにいき、どう連動して反応するか。相手もW杯に出たいし、自分たちもいきたい。ホームの利を生かすためにも、死に物狂いでいくことを確認してピッチに送り出した。とにかく集中力を欠くことがなかった。それがベースにあってはじめていいプレーが出てくる。相手の動きに対して一瞬たりとも集中力を欠くことがなく、相手の良さを確実に消した。また、相手の足にいくことは絶対になく、確実にボールにいくことでその勢いが相手を圧倒する。今日は非常にレフェリーが納得いかない部分があった。全員見えているのに、彼だけが見えていないことが多かった。サイドで吹くことがあっても、正面のものは吹かない。バーレーンは守備でも足を狙っていた。
故意のファウルに対してもレッドカードがでなかった」

-中田英寿は今日のポジションがベストか?
「ボローニャでの彼のポジションを見たことがあるか?というのは、ボローニャであのポジションをやっていたし、その意味では今日も非常に良かった。彼の場合はどのポジションでも全身全霊を出して戦うタイプ。たとえ前で使っていたとしても精一杯やったはずだ。与えられたポジションの中で最大限プレーするし、練習でも試合でもそうだ。彼のような選手が多く出てくることで日本はもっと強くなる」

メンバーGK楢崎、DF田中、宮本、中沢、FM中田英、福西、加地、中村(90分→稲本)、三都主、FW鈴木(69分→玉田)、高原

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