インタビュー

EDU COIMBRA(エドゥー・コインブラ)

[2003.10.30]

監督としてジーコが、常に強調しているように、日本代表スタッフは有能なプロフェッショナルで構成されており、それぞれ各分野でチームを支えています。その内の一人が“エドゥアルド・アントゥーネス・コインブラ”、通称「エドゥー」です。彼は、ジーコ監督の 6歳年上の実兄であり、長年サッカーに携わり培った豊富な経験の持つ人物です。選手としてはアメリカ、フラメンゴ、バスコ・ダ・ガマ、バイーア、ジョインヴィーレ、コロラド、カンポ・グランデ、そしてブラジル代表でもプレーをしました。監督としては、1984年にブラジル代表を3試合、そしてエクアドル、ペルー、メキシコ、日本のチーム、更にはイラク代表の指揮を採った経験があります。更には、体育学科の資格を有し、エドゥー執筆の本も出版され、日本の大学で講義をした経歴も持っているのです。そして現在、彼はアシスタント・コーチとしてジーコと日本代表でタッグを組んでいます。今回はジーコ自らがインタビュアーとして、兄エドゥーにインタビューしています。

■あなたは、日本に永年日本に住んでいますね。その期間に日本サッカーはどの様に進化をし、そして現在社会に於いての役割は何でしょうか?

来日してから約 10年の長い年月が流れ、日本は多大な変化をしました。全てが進歩した訳ではなく、中には後退したものもありますが。例えば、経済面では日本も、世界的な経済危機の煽りを被っています。社会での厳しい競争と会社の個人の能力に対する要求が増し、雇用の需要と供給のバランスが崩れ、職業難を招いています。それでも日本は、過去に構築した実績によって現在でも世界の経済大国としての地位を維持しているのです。そしてサッカーは、言うまでも無く、素晴らしい進化をとげました。サッカーの持つ娯楽面やフィットネス面のみでなく、若年層から年輩まで年齢に関わらず楽しむことが出来、家族の絆を深めるという面も、社会に於いての確固たる地位を築き上げたと言えるでしょう。このような事実からわかるように、日本のサッカーへの投資は最近始まった訳ではありません。勿論、プロへの関心が高まったのは言うまでもありません。現在では、クラブ、学校、地域スポーツセンター等の施設がサッカー関連職業者の主要就職先です 。 この発展は、アマチュア時代からプロ定着の現在に至るまでの過程において、少なからず海外サッカーとの交流によるところが大きいのではないでしょうか。そして、ブラジルは過去現在に於いて日本サッカーへの貢献度は比率的高いと思います。それは、今日までに来日し、更には日本に留まるブラジル人の数の多さを見れば一目瞭然です。日本サッカーの進化は予想出来た事であり、それが現実と化したのです。そして現在、世界のサッカー大国が日本人選手へ寄せる関心がこれを象徴しています。サッカー界に於いてはメディアが影響力を持っている事からも、選手達を巻き込んでの移籍に関する商談が比較的容易に成立するのです。現在では、南米も含め、主にヨーロッパ市場での日本人選手の姿がかなり見受けられる様になっています。

■日本の学校とクラブでの育成方針又は下部組織での指導方法の違いは何ですか?

基本的には、アメリカ文化が強く、又は、半強制的に根付いた指導方法が主流なのです。即ち、主に高校又は大卒がプロへの道を歩むという仕組みが成り立っています。しかしながら、最近ではこのコンセプトを覆す動きも見受けられるようになり、クラブが施設の充実化を図り、下部組織へのハード及びソフト面での強化を行っています。徐々に成果も出ており、既に数多くの選手達がプロチームへと昇格しています。このスポーツに要求される、正しい基礎、技術、体力作り、マリーシア(機敏さ・駆け引き・機転)等を指導出来る能力のある人材の確保に決定的な差が生じるのです。クラブの方が高校や大学よりも育成をする環境に於いては、より良い成果が期待出来るという事に関しては疑いの余地がないのです。勿論、必ずしも全体に共通して言える訳でもありません。しかし、日本人サッカー選手の全体的な進歩を考慮すると、外国人の指導者の協力は重要であり、未だに必要だと判断しているのです。理論よりも、実践に比重を置く育成方法を取り入れるべきなのです。今でも、ボールコンタクトによる実践での練習に乏しく、理論に対しての過剰なまでの懸念さが見受けられるのです 。 草サッカーと戦術トレーニングとでは遙かに違いがあるのです…。そこのところの段階を履き違えて解釈し、尊重していない各地方での指導者が相変わらず多いのです。

■あなたの日本代表での役割について話してください。

私は、アシスタント・コーチの立場として、代表の活動に対し全面的且つ無制限にバックアップをしています。一般的には「右腕」と呼ばれている存在だと思います。常に分析力と観察力を研ぎ澄まし、決断を下さなければならない時などに備えて、的確で納得のいく意見を述べられるようにしているのです。スタッフ内での意思の統率が図られており、我々のこのコンビは今後さらに向上して行くであろうとの確信を持っているのです。

■ 2006年W杯予選で日本に立ちはだかる最大の壁は何だと思いますか?

協会首脳陣の調和、そして活動に対しての尊重と信頼が、大変重要な要素であり、更には我々を発奮させてくれ、 W杯予選での成功へと導いてくれるのです。但し、五大陸を含め、世界のサッカー優勢国が容易に勝者となれる時代は既に終わりを告げています。現在では世界サッカー勢力の平準化が日々進んでおり、あらゆる情報がスピーディーに入手出来る状況で各国の監督は取りこぼしを避ける為にも事前に準備を整え、試合に挑んでいるのです。また、それ以外にも幾つか真剣に検討されるべき要素があります。例えば、時差、食事や移動の問題、更には日本の対戦相手となる可能性を秘めたアジアのサッカー途上諸国の活動情報に対しての情報収集などです。何れにしろ、我々は不意を突かれ不快な思いをしない為にも常に「目を光らせて」いる必要があります。W杯予選に関しては確率論から言えば、グループ一位のみが突破出来る一次予選の方が困難だと言えるのです。

■日本人選手で一番問題視する部分は何ですか?

日本特有の文化である静けさと過剰な迄に指示に従う姿勢、即ち、アドリブのタイミング、お互いのコミュニケーション、フィジカルコンタクトによる上半身の強さ、競り合いでのマリーシア(機敏さ・駆け引き・機転)等の欠如が、決定的な場面での個々の創造力を抑制していると思います。

■日本がサッカー大国への道を辿るには何が必要ですか?

現在、日本はアジア地域以外への制覇に目を向けています。技術の才能だけではそれは成しえないと思います。計画性を持って、世界のサッカー大国である、フランス、アルゼンチン、ウルグアイ、ルーマニア等との対戦を行うことで、徐々に選手達は、経験とマリーシア、そして将来有意義な結果をもたらす為の成熟さを習得しつつあります。このような試みにより、重要な試合で“結果”にマイナス影響を及ぼしている精神面を才能と結び付ける事が出来るのです。

■あなたはイラクの監督経験者ですね。国がこれ程迄に度重なる困難に遭いながらも、今後 W杯出場を果たす事が可能だと思いますか?

平和な時代には、イラクの選手達はアラブ諸国に於いて、大変優位な地位を築くだけの能力を持っていました。 1986年W杯に出場した時代がそれを象徴していたのです。問題は、度重なる戦争がどの様に選手達へ副作用を及ぼしているかなのです。但し、今回の戦によるトラウマは酷いものであり、余り良い結果を期待出来ないのではないかと思います。国の復興には時間を要しますが、平和への道を歩みだし、サッカーに関しても復活へ向けての取り組みが徐々に結果に繋がってきてはいるのです。但し、戦争はスポーツ界にも精神面でのダメージを与えるのも事実です。そして、現実として状勢不安定な国はサッカーに於いて芳しい結果は期待出来ないのです。いかなる状況であれ、要注意である事に変わりはありません。

■日本での、エドゥー・サッカーセンター( CFE)での貴方の活動はどうでしたか?

F1で有名な鈴鹿サーキットと日本最高級の松阪牛で知られる三重県での私の名前が付けられた育成センター、CFEでの活動はプロとして素晴らしい経験をする事が出来ました。僅か2年足らずで県内に於いて、アマチュア部門での各カテゴリーで上位を達成し、ヘゲモニー(主導権)を奪取する事に成功したのです。日本で最も歴史がある伝統的な天皇杯に三重県唯一の代表としての出場も果たしました。最大の目的は、生徒達が主要クラブでテストが受けられる為へのレベルアップ、又は、サッカー界での業務に就ける人材の育成を支援する事だったのです。例えば、高校、クラブ、各地域でのスポーツ団体、大学などでの就職です。私が日本代表へと移った事をきっかけに、残念ながら、スポンサー確保の問題やその他のしがらみにより、目標が閉ざされるがごとく、閉校を余儀なくされました。

■日本に於いての外国人選手の重要性な何ですか?

僅か 10年余りのプロサッカー歴史の日本は、依然としてサッカー先進国から学ぶ事は多々あるのです。この様な理由から、クラブも含め、特に高校や大学などで、今後も外国人を継続して受け入れる事が重要なのです。理論に対する知識と実践での豊富な経験がファンダメンタル(重要・必要)なのです。開幕当初から、Jリーグに輝きを与え、世に名を知らしめる為に多大なる貢献をしてくれたビッグネームの外国人達に対し、最近ではレベル的に劣っているのも歴然ですが、何れにしろ、彼達は広範囲に渡りサッカーノウハウを伝え貢献し続けてくれる事からも需要はあるのです。但し現在では、選手以上に、指導者の存在が重要であり、特に日本全土に於いて均等に配置されればより良い効果が期待で来るのではないでしょうか。

■日本では何が一番にあなたを魅了しますか?

日本はコントラストがとても多い国です。ネイチャー保存に対する意識が高く、何事も効率よく、組織化されており、社会が一つの共同体として成り立っている反面、修練されたルールに定められたこと意外に対しての順応力への無力さを見受けるのです。もしかしたら、日本の、事前に定められ、制御された行動が美徳をもたらしている反面、あの「ブラジル流巧みさ」が欠けているのかもしれません。地震などの悲劇的な災害を除き、インプロビゼーションが重要視される事態への対応能力は乏しいのです。でも、徐々にこの傾向は改善されてきていると感じます。そして、狭い国土に沢山の人 口 と、そして特に医療と教育制度に関しては感銘し、更には魅了すらされます。物価は高いのですが、生活維持と長寿を望めます。習慣と何千年もの伝統文化が超近代的効果を生み出しているのです。

■中田・中村・小野・稲本選手は素晴らしい選手達です。彼達に代われる選手達は既に存在しているのでしょうか?

今後日本サッカー界をリードするであろう頼もしい選手達の出現を快く体感してはいます。しかし、今後日本代表が目標とする公式大会での野望を達成する為には、彼達 4人は絶対に欠かせない重要な存在なのです。彼達の能力、成熟さ、そして献身的な姿勢は、今後スターダムを担い、向上心を秘めている者達にとっては素晴らしいお手本となるでしょう。

■ブラジルサッカーの現在に付いて話して下さい?

どんな状況に於いてもブラジルは世界サッカーの基準となるのです。ブラジル全国選手権を見守る過程に於いて、選手達の芸術的才能が溢れんばかりに披露される面とクラブ首脳陣達の私利私欲とのコントラストが日常茶飯事になっているかの様に思えます。ブラジル全州で選手の「質と量」には事欠いていないのです。そして、今以上にパレイラ代表監督はこの事実を上手に処理してくれると思っています。

■最後になりましたが、あなたは常日頃から本サイトに協力をしてくれております。何かサジェスチョン(提案)はありませんか?

本サイトがこれ程迄に好評で、多くのアクセスがあるのは、サイトの最高代表者である人物の能力と許容範囲の賜物だと思います。そのサイトに協力が出来る事を大変光栄に感じています。そこで、私のサジェスチョンは次の通りです。私の子供時代に、沢山の人から愛読されていた小冊子「 A VIDA DO CRACK」をサイトで蘇らせて欲しいのです。過去・現在のスーパースター達の「闘いの精神とプロとして慎み」などに付いての経験や教訓の物語なのです。これは、ファンの夢を汚し幻滅へと追い込んでいる、クラブ経営者達を萎縮させ、選手達を際立たせるものです。英雄は永遠に不滅なのです!

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