ジャパンコネクション

時の流れが止まる瞬間

[2006.2.21]

静岡で開催された日本代表の試合は、私が目することが出来、自身の長き現役生活で実際に体現する機会にも恵まれた、サッカーでの数々の素晴らしきプレーの記憶を蘇らせてくれました。

フィンランド戦で、ハーフウェーライン手前からの得点を決めた小笠原選手は、再現不可能とも 言うべきシーンを演じた主役でした。そして、今週のジャパン・コネクションはこれらの天才的なプレーに関して展開します。

土曜日に目の当たりにしたゴールがもたらした私の想い出を、本サイトをアクセスする皆さんと共に分かち合いたく思います。

自陣左サイド寄りのハーフウェーライン約2メートル手前で、小笠原選手の足からボールが放たれた瞬間、静岡スタジアム・エコパを埋め尽くした観客の殆どが、その後に描かれるであろう素晴らしき結末を想像すらしなかったことでしょう。ボールは弧を描きながら数秒間宙を飛び、今となっては一瞬の出来事のようにも感じられます。でも、その瞬間は正に息を呑む永遠なる時間にも感じました。我らがミッドフィルダーは以前にも鹿島アントラーズで、ガンバ大阪戦で同様なプレーを試みた経緯があります。

でも、その時はゴールキーパーが止めましたが、今回はどんな防止策もありませんでした。

ここ数日間、私は選手達とゴールに関して話す機会があり、彼等にはこのプレーがどんなに喜びをもたらしてくれたかを伝えました。先ず、あのようなゴールは代表戦による国際マッチでは極稀であることを話し、更には、これが仮にイタリアやスペインであったならば4~5分間のスタンディング・オヴェーションが起こると強調しました。でも、今回その場に居合わせた日本国民からはあまり反応がありませんでした。

ハーフウェーラインからのシュートと言えば真っ先に脳裏を過ぎるのは1970年ワールドカップのブラジル対チェコスロバキア戦でのペレーの映像です。欧州サッカーの伝統とも言うべきか、ゴールキーパーはゴールマウス前方で陣取っており、ボールはゴールポストをかすめたのです。

更には、ゴールバーにボールが激突したマラカナン・スタジアムでのマラドーナのプレーも観戦しました。このようなシーンはサポーターを熱狂へと導き、ゴールと共にクライマックスを迎えることを想起したのです。

スーパーゴールで私の記憶上で最も鮮明に覚えている例は、兄のアントゥーネスが1960年代にアメリカFCでエドゥーと共にプレーをした年に挙げた得点であります。

ヴァスコ・ダ・ガマ、ウルグアイのNacional、そしてアルゼンチンのHuracanも参加して、最終的にアメリカFCが優勝したサマー・トーナメントでのNacional戦で、エドゥーがセンセーショナルなプレーでセンターバック間を突いてアントゥーネスに当てたのです。そして、巧妙なタッチでドミングェスをドリブルで交わしてスーパーゴールを決めたのです。その場に居合わせた全てが立ち上がり、マラカナン・スタジアムは熱狂に包まれ、スタンドで観戦していた私はそのプレーと兄弟達が抱き合う姿に感動しました。この出来事は忘れ得ぬ一場面となりました。

このようなゴールは時の流れをも停止するのです。1960年代にも同じくマラカナン・スタジアムで、ペレーがアルゼンチン戦で敵のディフェンダーを、決して得意ではなかった左側へ切り返して、ペナルティー・アーク付近から相手ゴールキーパーCejasの頭上を越える究極なゴールを決めた試合も観ました。

そして、小笠原選手の得点同様に、ボールがネットを揺らすまでの数秒間は正に魅惑的な瞬間とも言えるでしょう。

そして1974年には、私自身がこのような一瞬を実体験する機会に恵まれたのです。2―0でリードされていたボタフォゴ戦で、先ず私がペナルティー・キックを決めて2―1としました。時間は経過しつつも、タイミングを見計らい私は中盤付近で、マリーニョ選手の背後を浮球で突き、ボランチをドリブルで交わした直後に、マウロ・クルース選手が私を目掛けてプレッシャーを掛けて来たのです。咄嗟にボールを頭上に跳ね上げて交わし、ウェンデオ・ゴールキーパーの飛び出しを確認しながら、ゴロ(グラウンダー)のボールをゴール隅に突き刺して、負けかとも思えた試合を同点に持ち込みました。スタジアムがプレーの一つ一つに歓喜に溢れ、最終的に熱狂の渦に包まれるまでの過程を私は体感することが出来たのです。

そしてイタリアでは、ウディネーゼで幾度かに亘り敵のサポーターからフリーキックに対して拍手喝采を受けた光栄なる機会にも直面しました。対ジェノバとカターニア戦でフリーキックでの得点後にスタンディング・オヴェーションで称えられたことを、私は誇りを持って思い出す事が出来ます。一生忘れられぬ出来事でした。

それ以外にも数多き天才的なゴール・シーンを世界中のあらゆるスタジアムで観戦し、更には自己のプレーも含めて、今回の小笠原選手のゴールは私に過去へのタイムスリップをさせてくれました。これらはあくまでも数例ですが、お蔭様で素晴らしき想い出は数多くあります。そして今、私はピッチ外に立って、拍手を送ることが出来、サッカーのみが与えてくれる魅惑を尊重しています。時の流れを止められる感動は、正に素晴らしいの一語に尽きるでしょう…。

来週またお会いしましょう!

それでは皆さん、ウン・グランデ・アブラーソ!

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