ジャパンコネクション

セルジーニョの教訓

[2004.11.2]

サン・カエターノ(現在、元鹿島のエウレル選手が所属しているサンパウロのチーム。ブラジル全国選手権で現在勝ち点65・5位。)のセルジーニョ選手のピッチ上での死から六日間が経過し、新たなる情報や、この様な事件に対するスタジアムの対応能力など、幾多の疑問が露呈されています。不幸にも悲劇が起ってから数多くの改善策が検討されます。今回の様に有名な選手を襲った惨事は、近年ではセルジーニョ選手が、コンフェデ杯でのカメルーン代表のFoe選手、ポルトガル・リーグのポルトに所属していたハンガリーのFerrer選手に次いで3人目になります。でも、実際には更に多くの名の知られていない選手達が死亡しているのです。

現時点でのワシントン選手(アトレチコ・パラナエンセのフォワード。現在27得点でブラジル全国選手権の得点ランキング1位。チームは勝点72で2位。現在、元鹿島のファビアーノ選手がキャプテンを務めているチームでもある。)の様に同じく心臓に問題を抱えている選手の精神的な面を私は想像するのです!非常に複雑な心境です。それは我々及びスポーツ界全体を動揺させます。だからこそ我々は、何故アスリート達のぞっとするような死に方が起こるのか検討する必要があるのです。現代においてサッカーの試合は、勝利への義務感に対するストレスへの比重が、直接経済的な重要性と関連しており、これをストレスを凌ぐ為にフィジカル面での強化を推進することで、危険が伴うのです。セルジーニョのケースは原因が様々であり、私はここで判断しているのではありません。でも、彼等の死亡に対する因果関係を慎重に見直すべきではないでしょうか?フィジカル・トレーニングを一日に3回こなすチームが実在することも承知しております。もしかしたら、これら全ては人間の限界への追及ではないでしょうか?私に正答はありませんが、この機会が論議するべき時ではないかと思います。

ここで考慮されなければいけない事は、選手自身の振る舞いでもあります。特にブラジルの場合では、サッカーは職業であることを重視すべきであり、国が抱える経済問題と失業率を踏まえると、多くの人々がプレー又は職に就く為に健康問題を深く考えないのです。そして、その先端に選手達の誠意を期待するクラブがあり、自己生命の危機をも顧みないとは予測すらしていないのです。もしかしたら、この相互関係を見直す必要性があるかもしれません。一クラブの会長としての立場上、私が言えることは、可能な限りの全ての検査は行っていると言うことです。でも、今回のような死亡が、それまでの絶対なる一連の真実を危険にさらすことで、これで十分だとは保障しかねるのです。

勿論、健康とリスクに関して語るならば、自動的に試合会場での予防対策に関しても話さなければなりません。そこで、更に多大な疑問があります。果たして、直ちに救助できる態勢が整っているのでしょうか? 必要不可欠な人材が非常事態に備えて準備できているのでしょうか?スタジアムには救急車の緊急出動に対するエリア確保は成されているのでしょうか?これらの疑問に対しての回答は「ノー」と言えるのではないかと思います。もしかしたら、改善への初期投資は高額かも知れませんが、正にこれが「生と死」の分岐点になりかねないのです。

私の現役時代には常時クラブは定期健診を怠らず、セルジーニョの死の様なケースを目撃した記憶はありません。実際には、1982年にサイドバックのカルロス・アルベルト・バルボーザ選手がブラジル全国選手権での試合の最中に心筋麻痺に見舞われましたが、私自身は目の当たりにはしませんでした。心臓病の問題で想起するのは、スペイン・サッカーに移籍するも心臓病が発見されて、現在では監督業に就いている、元選手のイーヴォ・ウォルチマンとCFZ do Rioの現スーパーバイザーであるカルロス・ガッヒチなのです。彼は、フラメンゴのジュニオール・カテゴリーでプレーをした後に、鹿島アントラーズへと移籍をしたのですが、心臓に問題が確認されてサッカー選手生命を余儀なくされました。でも、幸いにも彼等二人の場合は選手生命を無事に終えたのです。更に私は、実兄が同様な状況で他界したこともあり、このテーマに関しては適切に語ることができます。アントゥーネス(実兄)は仲間との草サッカーの最中に心筋梗塞に襲われ、死亡しました。彼はサッカー選手を引退後は健康を疎かにしてしまったのです。だからこそ、我々兄弟は常に定期健診を欠かしません。

結論を言いますと、先ず第一歩としては、専門科医、選手、フィジカル・コーチ、サッカーに関わる全ての分野のプロフェッショナル、更には関係組織やクラブを招き、全員を一堂に会してディスカッションを繰り広げるべきなのです。もしかしたら、改善策は検査を詳細に亘り分析して、クラブが注意を払うような要求をしながら、又は、活動の軽減を定める新たな方法を考案するかです。近年ではサッカーにおいて、特に膝や恥骨の障害が年々増加しつつあります。フィジカル面での蔓延的な過剰負荷を掛けすぎていないかなど、これらの要因全てを明確に理解しなければいけません。私には解りかねます。正直、私にはこれらの質問に対しての回答が現時点ではありませんが、我々が追及しなければいけないことは確信しております。生命は尊いものであり、今回のような事態に対して、せめてもの慰めの言葉になるのであれば、将来的には多くの人々の救済に繋がることであろうと言うことです。

…ということで、また来週お会いしましょう!
それでは皆さん、ウン・グランデ・アブラーソ!

ジーコ直筆サイン

>一覧へもどる