ジャパンコネクション

守備の要

[2004.09.07]

「最大の守備は攻撃にあり」と常に言われがちです。実際に数学的に考えれば、得点が失点を上回れば、勝利を確実にできるのですが、でも現実的には、最大の防御はしっかりと守備面でのシステムを構築し、更には偉大なゴールキーパーを有することがベストです!でも、ゴールキーパーに関しては以前にもこのコーナーで触れており、今回はディフェンスの話題を中心に取り上げて行きます。

サッカーチームでは、全ての分野においてのポジションが重要であり、成果を得るためにはバランスの取れたベストグループを編成しなければいけません。ゲームを組み立てるよりも破壊する方が楽だということもあり、中盤から後ろに位置するポジションがある面でアドバンテージを有するのも一理あります。このようなことからもディフェンダー陣はフォワード陣に対して普遍的に際立った存在に成り難いのです。だからといって、決してディフェンダーは楽なポジションという訳ではありません。正にその逆であり、攻撃面でのミスは唯単に得点に結び付かないという結果に対し、守備面では一つのミスが大会敗退をも余儀無くしかねないのです。

そして今日では、守備面を背負う選手達は単に相手の攻撃を破壊するだけでは務まりません。サッカーの変化により、選手達はあらゆる役割を果たすようになり、守備陣はそれに適応を強いられたのです。中盤でのスペースが確保しづらくなったことに伴い、サイドバックはほぼウィングの役割を果たすようになり、ザゲイロ(センターバック)は特にセットプレーも含めて頻繁に攻撃参加せざるを得なくなりました。そして、FKなどで巧みなキッカーを有するチームは、エリア内でザゲイロの身長と体格をセットプレーで有効に活用できるのです。

でも、これらザゲイロの動きと攻撃参加などはタイミングを伺いながら適度に行うべきだと言うことを明確にしておかなければいけません。絶対に避けなければいけないのは、守備の選手が余りにも頻繁に行き来を繰り返し過ぎて、試合終盤で疲労の蓄積により、相手の攻撃の対応にミスが生じることです。私は、日本代表では一回のセットプレーに対して走る距離が長いこともあり、ザゲイロを交互に参加させるようにしております。

ブラジルサッカーでのこのポジションを分析すると興味深い点に気が付きます。我々は常に俊敏な中盤と攻撃の選手達で有名ですが、ブラジルは長いサッカー史上において、ずば抜けたザゲイロ陣が名を連ねているのが事実なのです。そして現在では、このポジションの中心選手達の殆どは海外でプレーをしており、成功を収めています。そして、守備面でのプレーは目立たず、特に子供達にはこのポジションでのプレーを避けさせるべきだとの概念が多少なりとも変わりつつあります。

私の現役時代でも、欧州で成功を収めた偉大なるザゲイロ達と共にプレーをする機会に巡り合いました。その一人がモーゼルであり、フラメンゴでそのポジションでのキャリアをスタートさせて進化を遂げたのです。彼は異例なる成長を見せて、フランスと選手キャリアに終止符を告げたポルトガルで、突出した偉大なるザゲイロへと変化しました。そして、フラメンゴでその才能を開花させてサクセスストーリを歩んだもう一人の人物はアウダイールであり、彼はイタリアでサッカー選手として、全てにおいての頂点を極めました。更に多くの選手達の名を挙げることも出来ます!

でも、ここで是が非でも紹介したいのは、ある特徴の持ち主で、私のデビュー当時に大変注意を引いた、ブラジル人選手ではないザゲイロなのです。パラグアイ国籍のFrancisco Santiago Reyes Villalba、通称「Reyes」のことです。彼の身長は普通でしたが、体格が優れていました。もしかしたら、リベロでプレーしていたのでそう感じたのかも知れませんが、明確な理由は解らずとも、私が初めて巡り合った、ハイボールをむやみにクリアするのではなく、ジャンプをしてヘディングで味方へパスを送るザゲイロでした。彼は必ずパスを出して、私を大変驚かせたのです。

無我夢中でボールをクリアするのではなく、方向性を定めて危険を回避することが最良なのです。彼にそのことを学び、今でも教訓として根付いています。勿論、この事態には制限があり、非常時には味方ゴールへ向かっていない限りは「姿勢が向いている方向へ蹴ること」が最善策でもあります。でも、大抵の場合は、しっかりと試合の流れを察知し、味方の位置をジャンプ寸前に確認しながら眼を見開いてヘディングすることが、守備からカウンターアタックへ転じる可能性を秘めているのです。

結論を言いますと、攻撃は創造力が優先され、守備はチームの戦術面が抜きん出ると言うことです。素晴らしいザゲイロ・コンビやサイドバックで構成するのみでは十分とは言えず、実際には攻撃参加に対するカバーリングができる、守備面でのしっかりとしたシステムを構築する必要性があるのです。そして、これを成立できるのは献身的な練習への取り組みだけです。選手達の技術面以外に、入念な会話によるポジショニング・システムの確認は、全ての分野のポジションにおいて重要なことではありますが、特に守備面では基本的な事です。

そして、現代サッカーにおいての技術面では、選手達は何れかのサイドに対するスペシャリストとしての時代は終えたのだと念頭に置かなければいけません。選手は守備面で多才でなければいけないのです。勿論、得意なポジションはあるにしろ、3人または4人のディフェンダー・システム、あるいはウイングバックなど、チームが機能するためにはあらゆる役割を果たせなければなりません。私は監督として、更には攻撃の元選手としての立場から、敵のフォワード陣の罠に陥らないように、全ての策略を日本人ディフェンダーに対して伝えるように努めているのです。

ということで、ウン・グランデ・アブラーソ!
それでは、また来週!

ジーコ直筆サイン

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