ジャパンコネクション

オリンピックの総括

[2004.08.31]

世界最大のスポーツ祭典であるオリンピック大会が幕を閉じ、総括の時でもあります。このコーナーで私はブラジルについての話題に触れたいと思います。その前に、金メダル獲得数を3倍に伸ばして世界強豪5カ国の地位を確立した日本勢の素晴らしいパフォーマンスと、2008年北京大会の前兆を感じさせる異例な成果を遂げた中国についても称えずにいられません。

本サイトのオリンピックレポートでも述べたように、ブラジルはバレーボールとヨットの勝利と共に終えたのです。でも実際には、ブラジルはこの2種目に関しては年々強化が図られ、既に幾多のメダルを獲得していることもあり、今回の結果は予想外ではありません。柔道での銅メダル2個に関しても当然であり、乗馬でのホドリゴ・ペッソアの表彰台も目新しくありません。予想内の結果なのです。そして、私の注意を引いたのはマラソンでの出来事です。事実、驚きと言えるのは、誰しもが活躍を期待していなかったヴァンデルレイと、更に彼の身に起きたアクシデントです。

私は東京の自宅でマラソンを観ていたのですが、突然仰天しました。なんと、ブラジル人がリードしていたのです! 彼の顔に見覚えがあることをサンドラに話しました。サン・シルベストレ(大晦日に開催されるサンパウロの伝統的マラソン大会)での彼の走りを想いだしたのです。そして、男子バレーボールがイタリアに感動的な勝利を収めた数時間後に、彼がアテネでのオリンピック大会の幕を金メダルで閉じられるよう応援し続けました。

そして、マラソン・フィニッシュ間近に2度目の仰天に遭遇しました。ヴァンデルレイの表彰台への可能性をあの人物が妨げる様子を見るのは大変辛い心境でした。彼は、偉大なランナーであるイタリア人の追い上げには先ず耐えられず、更にはアメリカ人にも抜かれるであろうと、専門家は分析をしたのです。でも、誰が言い切れるでしょうか? アクシデントに見舞われながらも最後まで走りきった彼の計り知れないパワーは、確実に己を超過して、ライバル二人を凌ぐ可能性すらあったことを証明してくれたのです。ここで強調しなくてはいけないのは、アクシデントによる影響はアイルランド人が巻き起こしたタイムロスのみではないと言うことです。精神面も含め、あらゆるトラウマが弊害を及ぼすのです。大変嘆かわしい出来事であり、COB(ブラジルオリンピック連盟)が金メダルに相応しい彼に対して何らかの措置を要請してくれることを期待しております。

ヴァンデルレイを見舞ったアクシデント以外にも、男子同様の結果をもたらすポテンシャルを秘めていながらも、金メダルを逃した女子バレーボール・チームにも嘆かわしく感じます。ロシア戦での信じ難い逆転劇にはほろ苦い後味が残りました。今後は態勢を立て直して世代交代を図る時でもあります。

偶発的な出来事により、ダイアネ・ドス・サントスは残念ながら表彰台には届きませんでしたが素晴らしい活躍を魅せてくれました。我々は、大会直前に彼女が手術を実施していたことを思い出さなければいけません。実技の中での着地時に不安定さをもたらしてミスを誘いやすくするのです。影響は免れなかったのではないでしょうか。決して弁解ではなく、彼女のパフォーマンスと体操種目においての歴史的な5位入賞に敬意を表します。

これら以外の結果では、我らがアスリート達の直面する膨大な困難さを強調するべきでしょう。全てのアスリート達が、例外なく、威力と闘志をあらわにして、そして大半は逆境を乗り越えて、いまだかって到達し得なかった地位に辿り着いたのです。陸上、走り幅跳び、水泳など、数多くの種目に対して言えます。そして、このリストには女子サッカーも含まれるのです。

もしも、男子が女子同様な振る舞いをしていればオリンピック出場を果たしてメダルを獲得していたことでしょう。正に、謙虚さと献身、そして意志の強さの教訓とも言えます。男性陣はオリンピック予選突破を見下したのです。許し難い勘違いです。そして、女性陣は如何にして成すかを示してくれました。環境に乏しく、練習に取り組むクラブや国内でのハイレベルな大会がなくても、彼女達は技術力の高さを発揮してタレント性を見せ付けてくれたのです。そして、アテネから金以上の価値を有する銅メダルを手にして帰国を果たしました。

レネ・シモエンス監督は、女子サッカーで成果をもたらすことが可能だと証明してくれたのです。しかしながら、女性にはサッカーは不向きだという我が国を蔓延している固定観念を取り除かなければいけません。以前に私はジーコサッカーセンターで女子サッカーを始めたのですが、対戦相手が存在しない事実からも廃止を余儀なくされました。一時は40人弱もの生徒が練習に参加していたのですが、試合が出来ないのです。練習にのみ励み、一体何処と試合を行えば良いのでしょうか?

正に今がブラジル女子サッカーの歴史の行方を変える時なのです。我々は、代表がギリシアの地で獲得した地位に対する敬意と現時点での勢いを有効に活用して、女子サッカーを広く浸透させなければなりません。CBFが今後も支援を継続しながら、クラブと企業に対してのプロジェクトを実践しなければいけません。何れにしろ、2007年パン・アメリカン大会を控え、我がジーコサッカーセンターが女子サッカーの本拠地になることを誇り高く感じているのだと強調したいのです。

今回のジャパン・コネクションで後述したいメッセージは、メディアでは殆ど取り上げられないマイナーなスポーツのブラジル人選手のコメントです。テコンドウの種目でヂオーゴ・シウヴァ選手は惜しくも銅メダルを逃した直後に、関係者にもっと多くの支援を要求し、選手達は履物もなく地面で練習を余儀なくされる状況下で、メダル獲得を強いられるのは如何なものかと嘆いたのです。私が1990年にスポーツ庁長官時代、ブラジル選手団が最低限でも普通に大会に参戦できる状況を与えられるように、闘った日々を想いだします。正に激闘でした。ヂオーゴ・シウヴァの申し分通りであり、ブラジルスポーツ界は今後長い道程を歩まなければいけないのです。

ヂオーゴ・シウヴァは決して多くを要求しておらず、唯単にスポーツに専念出来る環境が欲しいのです。何らサポートもなくして4位入賞の彼が、バックアップを得られれば何処を目指せるかを皆さんは想像出来ますか?政府が全てを行う必要性はありませんが、企業が参入するように導くための起爆剤となることが最重要だと思うのです。これによって、陸上トラックやプール、そして体育館のみではなく、全てにおいて環境が整います。ヂオーゴ・シウヴァは今後も大きく羽ばたくことでしょうが、それ以前にオリンピックを夢見る数多くのアスリート達がインセンティブを心待ちしているのです。パン・アメリカン大会での結果で幻想を抱かないための教訓とし、オリンピック大会で更なる飛躍を遂げられるように期待するのです。そして、日本がアテネの地で成し遂げたように、メダルを3倍に伸ばせる偉業を達成できる日が何時しか訪れることを願っております。

それでは、ウン・グランデ・アブラーソ!
そして、また来週!

ジーコ直筆サイン

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