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ギリシャの優勝が意味するもの

[2004.07.06]

一昔前に、サンパウロのサン・カエターノがブラジルサッカーの強豪チームとして定着し、同じくサンパウロ2部のサント・アンドレーが満員のマラカナン・スタジアムでフラメンゴと対戦してコッパ・ド・ブラジル制覇を成し遂げ、オンセ・カルダスがリベルタドーレス杯で優勝、そして世界ワールドカップに次ぐ大会である「 UEFA EURO 2004」でギリシアがチャンピオンに輝くなどと発言しても笑われるのが落ちでした。更には、同人物がブラジル全国選手権でボタフォゴとパルメイラスが降格し、フラメンゴとコリンチャンスが共に降格ゾーンに低迷することを予測でもしたならば、瞬時に狂気の沙汰だとののしられたでしょう。でも、これら全てが現実化しており、我々は日々驚かなくなってきています。

そして、日曜日には新たな「青と白」がサッカー歓喜に酔いました。ギリシャは、リスボンでほぼポルトガル・サポーターに埋め尽くされたスタジアムで行われたポルトガル戦で「 UEFA EURO 2004」を制覇したのです。規模は異なりますが、サント・アンドレー対フラメンゴの様に、ギリシャは敵のユニホームとサポーターに臆せずに立ち向かい、勝利を手中に収めることで世間を納得させました。

以前から私はサッカーの伝統に関して述べてきました。世界サッカーの均衡化は現実であり、この状況を打ち砕くには厳密なフィジカル強化と戦術面を徹底する、または苦境を打開できるクラッキ(天才)の存在のみだと言えます。そして、私が判断するには現段階でこの条件に当てはまるのは世界でロナウド、ロナウジーニョとジダンの 3選手と思います。実際には他にも偉大なる選手達が存在しますが、劣勢なスコアを一挙に跳ね返すことが出来るのは彼ら3選手のみと思います。

そして、残る選択肢は「 Discipline Tactics(統率のとれた戦術)」、献身的な練習と厳密なフィジカル強化と言えるでしょう。正にこれらが、タレント性で傑出した選手達がいないギリシャの特長でもあります。私は前回の本コラムで、準決勝進出を果たした4カ国では、技術面で劣るサッカースタイルを展開するギリシャが個人的には最も魅力に欠けるのだと述べました。でも、効果的に戦術を駆使して勝利した功績には敬意を表します。決定的な場面で最大な特長でもあるディフェンスの力とヘディングの強さを生かし切ることが出来たのです。

ギリシャが突如として出現したかのように思いがちな皆さんに「 UEFA EURO 2004」の決勝までのチームの軌跡を綴ります。ユーロ予選ラウンドでは、ギリシャはグループ6に属して序盤戦をスペインとウクライナに敗戦する滑り出しでした。でも、その後はアイルランドとアルメニア、更にはスペインとウクライナも含め全試合を好調に連勝で終えたのです。1対0で4勝、2対0で2勝という僅差での勝利ですが、突破するには十分な結果でした。そして、アゥエイでの対スペイン戦の1勝が敵を敗者復活戦へと追い込んでしまったのです。

最終的にギリシャは勝ち点 18を挙げてユーロ予選ラウンドを1位で通過しました。しかしながらギリシャはこれ程の活躍ぶりにも関わらず注目を浴びるには至らなかったのは、もしかしたらスター選手不在が影響したのではないかと言えます。我々の視線は必然的にクラッキ(天才)を追い求めるのです!でも、彼らは着実に一歩一歩突き進みながら、優勝候補大国であるフランスとチェコ共和国に勝利し、更には開催国・ポルトガルを2度に渡り下しました。この功績に対して議論の余地はありません。

コッパ・ド・ブラジルで優勝したサント・アンドレーの足跡も同様なのです。 ABCパウリスタのチームは、例えば現段階でブラジル全国選手権の上位に位置しているパルメイラスを下しました。堅い守備と勤勉な選手達で構成し、決勝まで進出して存分に自己の役目を果たしたのです。 これを決して驚きだと受け止めたらいけないのです。

注: ABCパウリスタ ? サンパウロ近郊のSANTO A NDRE、SAO B ERNARDO DO CAMPO、SAO C AETANO DO SULの3市から成る地域のこと。

そして、現在、首位が頻繁に入れ替わりながら、勝ち点差 5の範囲内に13チームがひしめくというブラジル全国選手権の状況は偶然とは言えないのです。去年のクルゼイロのように1チームが独走するのは大変険しいのではないかと思われます。ハポーザ(狐 - クルゼイロの呼称)の決定的な他チームとの差は中盤のアレックス選手の絶頂期にありました。現時点では移籍しており、同等の活躍が期待出来る選手が見出せないのです。

チームの主要選手達は代表に収集されることもあり、独走態勢の確率は更に低下します。そして、欧州マーケットがオープンすることで有能な選手達は今期中旬には移籍交渉の対象となります。パルメイラスは既に、現在ブラジル国内で活動する最優秀フォワードとも言えるヴァーギネル・ローヴェ選手を失いました。だからこそ、今季の大会の終盤では多くのチームがタイトル争いに加わり、更には多くの名門クラブが降格を免れるべく闘いを転じるという感動的な展開による結末が待ち受けているのではないかと予測できます。大会開幕直後に指摘したことを再度繰り返します。選手層が厚く、計画性と安定感を保てるクラブが最終的に結果を出せるのです。ユーロの秘訣が有効なので…。

最後に、オリンピック開幕まであと僅か数週間だということを思い出しつつ終えたいと思います。そして、私が 3度に渡り試合をした時に国民がサッカーに情熱的であるかを感じ取れたように、今回もギリシャ優勝のプラスエネルギーが国を感化し、更にはアテネで開催されるスポーツ祭典の全種目に伝わってくれることを願う次第です。

…ということで。ウン・グランデ・アブラーソ!

それでは皆さん、また来週お会いしましょう!

ジーコ直筆サイン

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