ジャパンコネクション

困難な決断

[2004.03.23]

どんな種目でも、代表のユニフォームを着る事は世界中のアスリート達の最大の夢であると思います。そして、選ばれし軍団の一員としての活動は、ルールを遵守し献身的に最大限母国の名誉向上に努める必要性を有するのです。私のプロサッカー人生を常に導いてくれたのが、「規律」と「献身」という二つの単純な概念なのです。そして現在では日本代表の指揮を採る責任に於いて、この概念を覆す訳にはいきません。だからこそ、私は選手達の無断外出又は規則違反を認める事は到底出来得ないのです。

今回の日本代表メンバー発表に関しての話題である事を既にお気付きかと思います。 2006年W杯予選のデビューを飾る対オマーン戦へ向けて、鹿嶋市内で行われた直前合宿の最中に無断外出を行った8名の選手を、私はシンガポール戦の選出メンバーから外しました。特に、代表指揮官として限りなくオープンにコミュニケーションを図る姿勢を主張して来た事もあり、今回の決断を下すのは大変苦難な判断でした。合宿中に選手達から食事メニューのバリエーション及び外食の要請を受けたのです。そして、我々は環境の変化も考慮し食事に出かけました。

事が起きたあの夜、彼らの望みを聞き入れ、我々は全員で夕食に出かけ、スタッフ陣は選手達とは別のテーブルに席を取りました。その後、全員は普通にホテルへと戻り、翌朝の練習には全選手が揃って練習に励みました。何ら疑いの余地すら無かったのです。しかし、メディアを通じて出来事を知った私は大変な驚きと失望をさせられたのです。

所属クラブで、彼らは普通の生活様式を送りながら、チームでの活躍により代表へと収集されるのです。普段は映画に行き、夜間外出をしたりと、いわゆる、一般的な日常の日々を過ごしている訳です。だからこそ彼らは、代表での活動期間は短期であり、常に集中力を欠かさず、目標をしっかりと見据えて、フィジカル・技術・精神面でのベストを追求する必要性がある事を認識しなければいけません。

私を熟知している人であれば、決して徹底主義者ではなく、言わばその逆だと理解してくれている筈です。どんな時でも、可能な限り良き理解者であるのですが、その為には絶対に兼ね備えていなければならない要素である「責任感」と言う心得が必要であり、これが常に伴って初めて成り立つのです。私自身、サッカー人生を通じて自分のやりたい事を犠牲にした記憶はかってありませんが、但し、その全てを適切な時間に取って置いたのです。例えば今後、選手達が各自宅から練習に通い、合宿の存在自体を排除する可能性すら否定する事は出来ません。但し、代表収集期間は多くの選手達が自宅から遠く離れて過ごす事実からも、合宿は食事と休養を考慮した上での手段でもある訳です。実際に私はそこまで柔軟性のある思考を持っています。

とは言え、選手達が過ちを犯した事に対し何ら戒めも与えないような危険な前例を作る訳にはいきません。ただ、その場所で一体何が起こったのか等の事実を究明する意思はありません。私にとって、重要なのは彼達が規則違反をおこし、無断外出をした事実なのです。この現実を受け入れる事は出来ません。私は常に日本サッカーの将来を見据えており、今回の彼達が犯した悪例がどの様な意味を持つのかを考えなければなりません。年齢的には多くが若い世代かも知れませんが、既にお手本とされる模範的存在の選手達なのです。実際に、現在の全メンバーの中で W杯予選を戦った経験の持ち主は唯一中田選手だけなのです。更には、現時点での僅か10日間余りの合宿期間すら耐えられない選手が、如何にしてW杯という約40日間の長い期間を過ごす事が出来るのでしょうか!

そしてグランド外では、自力では決して結果が期待出来ない国が、手段を選ばすにして勝利を求める監督の影響を受け、他国からの選手を招聘するという事実が発覚した事で、代表問題が国家にとってどれ程までに最重要課題であるかを物語っているのです。非常識であり、 FIFAがこの様に無責任な帰化問題に対し禁止令を下した事は大変正解な判断だと言えるでしょう。

今後、日本自身もグランド外で多くを学ばなくてはいけません。今回、オリンピック代表は UAEから帰国し、数多くの選手達が腸炎に掛かり、下痢による体調不良に見舞われました。関係者は食あたりが原因ではないかと考えていたのです。そこで、私は実際にリベルタドーレス杯やW杯南米予選などでの体験談を伝え、更にブラジルは施設や調理師を調査するスタッフを帯同させていた事を明らかにしました。勝利はグランド内だけで得るものではないのです。バスコ、フラメンゴの元スーパーバイザーは常にホテルの宿泊客名簿まで入念にチェックし、何か異常が無いかを確認していた程です。

今回のシンガポール戦は、調理師の帯同も含め、この様なファンダメンタル(基本的な)な部分への配慮も怠らずに臨む予定です。そして、現況で決して生じさせてはいけないのが内部的問題なのです。外部であらゆる手段を使って挑んで来る相手に対し、我々は一丸となって迎え撃つ必要があり、自己破滅を招く様な実態は絶対に避けなければなりません。

今回の件は、 W杯予選へ向けてのスタート時点で起こった事が不幸中の幸いだとも言えます。代表メンバーから外した事で技術面でのレベルダウンを引き起こす可能性はありますが、自分の良心が命ずる判断を下したのです。そして、決して代替えの出来ない選手は存在し得ません。但し、これで結果が伴わなければ、今まで以上に私に対する要求が増す事も承知しております。自分の決断に確信を持っており、今回の処罰の時効は時間のみが解決するのです。結果、彼ら8人は他にチャンスを与え、新たに収集された選手達はこれを生かす可能性を秘めているのです。但し、処罰は永久的なものではありません。代表への復帰は彼ら次第であり、私の信頼を再び獲得しなければならないのです。

実際に今回の様な件で被害を被るのは日本なのです。全員がこの出来事で重要な教訓を得、今後のチームの行動に反映出来る事を願っております。そして、我々は W杯出場という最大の目標に向かって、グループは更に一丸となり歩み続けるのです。

という事で…、ウン・グランデ・アブラーソ!

それでは、また来週!

ジーコ直筆サイン

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