ジャパンコネクション

FIFAの祭典

[2004.03.09]

去る 3月4日、私はロンドンで開催されたFIFA100周年記念祭に出席の為一時渡英しました。ペレにより選出された100名(後に125名へと拡大され、その選定基準に対し一部ではハプニングを呼んだ)の現役及び生存している元選手達へのFIFAの表彰式典でもありました。リスト作成に採用された如何なる基準にも関わらず、世界中の各世代の著名選手達を同じ空間に同時に会する事を可能に出来た事実は感動的であり貴重な出来事なのです。

私は 1982年までタイムスリップし、再び現役時代の興奮の一時を体感する事が出来ました。私の隣にはファルカン、ソクラテス、ジューニオル、そしてそれぞれの妻が一同に参列していました。ホテルでは、我々はあのW杯での喜びと悲しみについての想い出に浸り、更には20年以上が過ぎた今でも、スペインから優勝トロフィーを母国へ持ち帰る為には何が欠けていたのかを再び分析し語り合ったのです。正直な感情として、私は1980年代に彼らと共に戦ったフラメンゴのチームが恋しく感じたのです。とても心地よい哀愁とでもいうべきでしょう。

我々の古き良き同士達以外にも、ロンドンにはペレ本人も含め、多くの英雄達が出席しており、更には偉大なライバルであるチリのエリアス・フィゲイロアや現在インテル・ミラノのジアシント・ファチェッチ達にも再会する事が出来ました。そして、ミシェル・プラティニとはコーヒーを片手に彼の UEFA会長就任の可能性について意見を交わしました。彼は、欧州クラブが直面している問題である経営難に関しても話してくれたのです。それ以外にも我々は、レアル・マドリードのブトラゲーニョ、バイエルン・ミュンヘンのルメニゲ、ドイツ協会のベッケンバウアーやインテルのファチェッチなど元選手達がクラブの重要なポストへの就任が増大している事に関しても話し合いました。時間があればもっと多くの名がこの話題に加わっていた事でしょう。以前にもこのコラムで発言したように、選手達が引退後もサッカーに携わって行くに当たりどんなに事前準備が重要であるかを確信持てました。

他にも今回のこの式典で興味深かった事実は、過去現在に於いての選手の比率でした。選出されたリストの約 5割が現役選手達だったのです。主に、我々がテレビを通じて感嘆させられるタレント勢です。その彼達が近づいて来てサインを求め、そこで新たな出会いが生まれたのです。一回のシャッターで、ペレ、私、そしてロナウジーニョ・ガウーショの3ジェネレーションが一つの記念写真に納まったのです。これら全てが喜ばしい事でした。そのロナウジーニョ・ガウーショがまた一つ私に感動の一時を演出してくれたのです。彼は私に挨拶に来て、オランダのダビッツの父が私のファンにも関らず恥ずかしくて打ち明ける事が出来ずにいるのだと言ったのです。私は、一緒に写真を撮り、サインをし、会話をする事で、オランダの新たなファンと出会ったのです。サッカーがもたらす偉大なるパワーに感動を余儀無くされました。

ここで選出リストに対して触れざるを得ません。誰しもが、リストを作成するのが如何に困難かは理解出来るでしょう。何故なら、誰がどのような選出をしようとも必ず漏れが生じるからです。ペレも自分なりのリストを作成し、リスクを負ったのです。私の現役時代にはペレとは幾多の意見の相違がありましたが、決してそれは、彼のブラジルまたは世界サッカーへの偉大性に対する尊敬の意を妨げる要因ではありませんでした。だからこそ尊重心を持ってみなければなりません。でも、今回のリスト作成に於いて彼の大きなミスは、この大役を受理し、この様な形での露出を余儀無くされた事です。彼の過去現在に於いての貢献、そして地位を考慮し、直接関与するべきではなかったのです。

勿論、今回のイベントの輝きは選出選手名の有無に関らず薄れる事は有り得なかったのだと思ってもおります。今回、私が表彰された賞も、リストには名前を連ねなかった現役時代を共にしてくれた多くの仲間の賜物でもあるのです。そして、既にこの世を去った多くの貢献者達も、今回、美しいロンドンの町でその功績を称えられたのです。厳密にはどれだけの多くの人物達があの場所に参席する事が出来たのでしょうか…。私にとっては、世界中の全ての偉大なる選手達があの場に出席していなくとも表彰されていたのだと感じました。実際には、サッカーは一人では成り立たず、今回の祭典は 125人の選手で編成されたチームが一丸となって地球上の全選手の名誉を守るべく代表していたのです。

これ程多くの仲間達と会し、数知れない歴史を見守り、その過程を生きて来た私は、何か素晴らしい予感の兆しで心の高鳴りを抑えられずにいたのです。私の人生の記録が脳裏にスローモーションで映し出されました。進化を求めての闘いの日々やチームの勝利を導くべく闘争心など、初めてガヴェア (フラメンゴのトレーニング場)に練習に訪れたあの遠き日から今回のロンドンでの瞬間までを鮮明にです。タイトルの数々、良きチームメイト達。膝の怪我からの復帰への努力。喜びも悲しみも全てのストーリーが映画の如く蘇ったのです。正に私のサッカー人生の全てがです。私が、現在監督として選手達に伝えようとしている、人生に於いてサッカーから教えられた教訓なのです。そして今回の祭典は、サッカーという私の人生は終わり無きストーリーだと確信を持たせてくれたのです…。

それでは、また来週!

ジーコ直筆サイン

>一覧へもどる