ジャパンコネクション

バレーボールとブラジリダーデ(ブラジリアンテイスト)

[2003.11.11]

故郷又は母国を遠く離れて過ごした経験のある者だけが、時に同じ国同志で出会うと感じられる癒しの気持ちと云うものがあります。どれだけ優しくされようとも、そしてどれだけうち解けていようとも、何かが足りないのである。私の場合、ブラジル人として、ブラジリダーデ(ブラジリアンテイスト)を恋しく感じるのです。この哀愁とも云える想いを説明するのはとても複雑であり、意味を明確に伝えるのは大変難しい事だと言えますが、色々な物に対して恋しくなるのです。そして、我々は心の通じ合う良き親友達と再開するチャンスともなれば、感動的且つ歓喜溢れる気持ちで一杯になるのです。とても感傷的になるものなのです。

ジーコ監督

去る木曜日、私はこの様なひとときに浸る事が出来たのです。東京から仙台まで女子バレーボール世界選手権を闘っているブラジル女子代表を観戦しに行って来ました。相手はブラジルの伝統的なライバルでもあるキューバとの一戦。試合前、ロッカーへ激励に訪れた際、全員に温かく歓迎され大変感動的でした。古き友人でもあるゼ・ロベルト監督の依頼を受けて、「マイ ストライカー・ヴィルナ選手」及び選手全員と話をしたのです。ブラジル全国民が、今この場で少しでも選手達の力になる事が出来ればとの想いを伝えたのです。日本在住の全ブラジル人の代表者かの様な心情で語ったのです。ゼ・ロベルト指揮官がチーム全体に素晴らしい雰囲気を如何にもたらしているかという事が、その時点での選手達の表情のポジティブなオーラで感じ取れたのです。彼は、バレーボール界での勝者であり、大変穏健な人物なのです。一時はクラブスポンサーの責任者としてサッカー界にも籍を置いた経験の持ち主でもあるのです。その後、バレーボール界へ指揮官として復帰をしたのです。代表監督業というものは、舞台裏で活動するのとは異なり常に「ターゲット」の対象となるのだと言う事も含めて彼と色々な話をしました。

ここでヴィルナ選手に関して多少語らせてもらいます。彼女には、フラメンゴと背番号10に対する熱いパッション以外にも、特別な敬意を抱いており、彼女にとっても同じ心情だと確信しております。CFZにも訪れ、著名人サインボードにサインもしてもらいました。ヴィルナ選手は、チームの為に努力を惜しまず誠心誠意力の限りコートで燃え尽きる迄闘い続ける真の戦士とも言えるでしょう。同じく経験溢れるフェルナンダ・ヴェンツリーニ選手の存在も忘れてはいけません。そして、才能豊かな若い世代の選手達の実力。ゼ・ロベルト監督の今後の課題はいかにこの経験と若さを融合させ、常にタイトルを狙える常勝軍団に育て上げるかなのです。

キューバ戦は、序盤からブラジル優勢で楽に3-0で圧勝出来るかの様な展開で開始した。まず2セット先取した後2-2の対まで持ち込まれ、苦しい展開へとなったのです。大変興味深い事に、日本のサポーターはキューバを応援しており、この心理状況も理解出来ない訳ではありません。なぜなら、あまりにもブラジルが立ち上がりから圧倒しており、あっけなく勝負が決まりそうだったからなのです。観客はもっとエモーション(感動)と熱戦が欲しかったのです。ブラジル楽勝ムードでの展開の最中、キューバの反撃開始と同時にスタンドは盛り上がりキューバへの熱い応援が繰り広げられたのです。

まさか、観客が欲している感動をブラジルの選手達がそのまま鵜呑みし、白熱したゲームを演出するとは想像もしませんでした。ヒートアップしたゲームへと展開し、感動は極限へと達したのです。39対37迄もつれ込み、最終的に試合はタイ・ブレークへと持ち込まれたのです。初めからブラジルの勝利を確信はしていたのですが、エモーションに溢れ鼓動が高まり心臓が破裂せんばかりに大変苦痛を与えるゲームとなったのです。ブラジルは苦しい状況の中でも動揺せず終始冷静に試合を運ぶ事が出来たのです。そして、勝つべくして勝利を得たのです。

試合前に、敢えて今大会でのブラジルの現状に付いて強調をしたのです。現在3位であり、上位3カ国がアテネへのキップを確実に手中に収める事が出来るのだと。そして、試合中に私の興味を引いたのはテクニカルスタッフの行動なのです。私も監督としての本能が自然と働き色々と比較をしてしまうのです。あらゆる支持がコート脇で飛び交うのです。バレーボールの監督は常に起立状態でプレーに対して詳細にわたりコーチングが出来るのです。その隣はもう一人スタッフが居て、更にベンチに二人、そして他にスカウティングを行っているスタッフ。但し、全員がコートの直ぐ近くに陣取れるのです。サッカーでも同様に、直ぐ近くで色々な支持や安心感を伝える等、もっとアクティブに直接試合に関与出来ればどんなに素晴らしいかと感じました。サッカーでは、せいぜい試合が継続中にサイドバックへの指示が出せれば幸いに思わなければいけません。それすら出来ない事だってあるのです。

サッカーとは異なり状況に応じての監督の素早い判断が要求されるバレーボールを観る事によって、私が以前から重要視してきたピッチ内でのコミュニケーションが出来る選手達がどんなに不可欠であるかを再認識する事が出来たのです。性質が完全に違うスポーツを通じて、コミュニケーションがもたらす威力の偉大さを垣間見る事が出来たのです。

私が少年時代にマラカナンジーニョ(マラカナンスタジアムの横の体育館)へバレーボール日本代表を観に行った日から現在に渡りこのスポーツから多くを学び、そして今日また新たなる知識を得たのです。ヂシプリン(規律)、タクテクス(戦術)、そして判断力の早さ等は私のキャリアの中で常に応用して来た要素なのです。バレーボールは私をもっとも虜にするスポーツの一つであり、現在でも、リオ・デ・ジャネイロにいる時は時間が許せばビーチバレーを仲間達と楽しんでいます。特に、足が使えるようになってからは私にとってまた一段と馴染み深く楽しいスポーツとなりました。

今週のこのコラムを終えるに当たり、テクニカルスタッフ、選手、そして全ての関係者の皆さんに感謝致します。母国ブラジル代表を数時間に渡り応援出来た事を光栄に感じる事が出来ました。これからも目標でもあるオリンピック出場権を獲得出来る事を信じて応援し続けます。目標達成に向けて頑張って下さい。そして、可能出れば来週から開幕する男子バレーボール代表の試合も観戦出来ればと願っております。

それでは、みなさんまた来週お会いしましょう。

ジーコ直筆サイン

>一覧へもどる