ジャパンコネクション

閑古鳥の鳴くスタジアム

[2003.10.28]

満員のマラカナンスタジアム。スタジアムがはち切れそうなサポーターの熱狂的な応援と大きくなびくチームフラッグの波。この素晴らしいパノラマはサンパウロのモルンビ・スタジアム、ミナスジェライスのミネイロン・スタジアム、そして東北部のスタジアムと全国のスタジアムで繰り返されていたのです。私のフラメンゴ時代ごく当たり前だったこの熱い炎の光景は日々消えつつあるのです。スタジアムでは閑古鳥が鳴いているのです。つい最近ヨーロッパへ旅行をし、イタリアサッカーを観戦しブラジルと同様の現象を目の当たりにしたのです。スタジアムがガラ~ンとしているのです。私は83年と84年の2シーズンイタリアのウディネーゼでカルチョを戦いました。当時、スタディオ・フリウリは常に4万5千の席が完売状態でした。現在、世界の2大サッカー大国であるブラジルとイタリアは観客減少に見舞われているのです。

スタジアム 以前、このコラムでもこの現象に付いてヒントとなるような説明をしたかのようにも思います。試合自体に関して言いますと、「クラッキ(名選手・天才)」の不在が大きな要素ではないでしょうか。タレント性に溢れる選手こそがサポーターを引き付け、子供達を魅惑し、スペタクルの輝きを増すのです。その証が、観客不在の苦しみを知らないブラジルのクルゼイロであり、イタリアのミランなのです。常にエクセレントな観客動員数を維持しているのです。このエリート軍団にユベントスも付け加えるべきでしょう。但し、これに付いて語るには「ファンダメンタル(基礎的・基本的な)な」部分、即ち、「インフラストラクチャー(構造・組織)」に付いて触れなくてはいけません。

上記に述べたクラブは計画性に則った模範的な存在なのです。ミランに関して言いますと、20年前には2部を味わったクラブでもあります。その後、建て直し組織化する事によりサッカー王国を築いたのです。その結果、ミランとユーベは「クラッキ(名選手・天才)」を有する事が出来、それによりファンをスタジアムへと導く事が出来るのです。このポイントに関しては、スペインは突出した存在です。スタジアムは常に満員状態なのです。しっかりと「オーガナイズ(組織化)」された大会を開催する事が出来れば、自ずとファンはスタジアムへ足を運んでくれるのです。更にそこには、世界有数の「クラッキ(名選手・天才)」がプレーをしているのです。リーガ・エスパンニョーラは非常にハイレベルな大会であると同時に模範的な「インフラストラクチャー(構造・組織)」を備えたレアル・マドリードがあるのです。そしてイングランドで私が観たものもこの現実とさほど違いはありません。日々、明らかにプレミア・リーグは才能溢れる有能な海外選手の活躍の場として定着しつつあります。ドイツでも同様にファンはチームを応援するが為にスタジアムへと詰め掛けるのです。その反面、ブラジル、イタリア、特にアルゼンチンは国の経済的不況の煽りもあり、日増しにスタンドからファンの足が遠ざかっているのです。正にこの状況は重大な問題だと言えます。この現象は国内リーグに「クラッキ(名選手・天才)」が不在しているのと、サポーターに対する大会自体への信憑性の低さが直接反映しているのです。W杯優勝回数を合計するとブラジル、アルゼンチン、イタリアだけで10を数えます。今日迄にW杯は17回開催されており、この3カ国だけで50%以上の優勝回数を保持しているのです!この事実を考えると、問題はタレント不足では決してないのです。要は如何にタレント豊かな選手達が配分されているかなのです。もちろん、彼達はしっかりと「オーガナイズ(組織化)」されたリーグへと集中するのです。

スタジアム イタリアはそれでもまだこの現象が軽減されている方だとも言えます。ヨーロッパには世界最高峰とも云えるハイレベルなコンペティションであるチャンピオンズリーグが存在しているのです。サッカー界のエリートとも言えるべきクラブがヨーロッパ大陸で激闘を繰り返し、スタジアムは常に埋め尽くされている状態なのです。モチベーションも極限に達し、ワールドワイドに注目を浴びるのです。それに対し、ブラジルとアルゼンチンは同等に立ち向かえるだけの大会が存在しません。南米では、大陸レベルで新しいコンペティションを常時開催し尚消滅させると云う繰り返しが続いているのです。リベルタドーレス杯に関しては参加クラブ数を増やす事によって、大会自体が膨らみ全体のレベル低下に繋がっているのが現状です。

日本代表のヨーロッパ遠征時、オランダ迄足を伸ばし、フェイエノールトの試合を観戦して来ました。オランダリーグは多少こぢんまりしてはいますが、それでもスタジアムには観客が足を運び盛り上がってはいます。尚、クラブの会長が主要選手8人を放出し、チームを解体寸前に迄追い込んだ事に対してサポーターの激しい怒りの雄叫びも聞く事が出来ました。この様な状況にも関わらず、スタジアムは応援するサポーターで満員だったのです。何事も信頼なのです。チーム又はリーグ全体に対する信頼性が欠けるとサポーターは自ずとスタジアムから遠のいて行き、調子の良い時にだけ優先してスタジアムへ出向くようになるのです。今ブラジルで起こっている現象がまさにこれなのです。更には、これに過剰な迄の試合数と不況が伴って問題は更に深刻化しているのです。そして、最終的にファンはTV観戦をオプションとしてチョイスせざるを得ないのです。

スタジアム 日本では、常時8~9チームがそこそこの観客動員数を保っています。もちろん、サッカー大国のアベレージと比較すると決して満足出来る数字ではありませんが、スタジアムの平均キャパシティーが約2万人だという事も考慮しなければいけません。それでも、ディビジョン2のアルビレックス新潟を取り巻く驚くべき現象が起こっているのです。アルビレックス新潟は現在J2リーグ1位をキープし、J1昇格へのキップをほぼ手中に収めていると言っても良いでしょう。ホームゲームでは毎試合と言って良いほど4万人以上のサポーターがスタジアムを埋め尽くし熱い応援を繰り広げるのです。紛れもなく、選手達もこの熱い想いには感化されるのです。

誤解しないで下さい。私は決してTV中継に対して異論を立てている訳ではありません。TV中継はとても有益なものであり、私や他のサッカー関係者にとっても最大に役立っているのも事実です。私が常に世界のサッカー情報をリアルタイムで得る事が出来るのもテレビモニターを通じてです。但し、まさにサッカーが織り成すスペクタクルの真価を高めるのはスタジアムでのサポーターの感喜溢れる熱い想いなのです。観客溢れるスタジアムでのゲームが真のサッカー祭典なのです。フラメンゴは過去において強豪であると同時に観客動員数ではダントツでした。マラカナンスタジアムで日曜日に行われるクラシコ(伝統のある大試合)。10万人以上のサポーターがスタンドを埋め尽くし熱狂的な応援を繰り広げていたのです。ウディネーゼでは、本拠地スタディオ・フリウリで開催されるホームゲームはリーグ開幕前に一部予備席を確保し、既に年間通じて各試合3万席が完売していたのです。現在、スタジアム自体縮小し、それに伴って観客も減員してしまったのです。観客が減ればスタジアムで披露されるスペクタクルの魅力も減少の道をたどるのです。

では、みなさんごきげんよう!
また来週お会いしましょう。

ジーコ直筆サイン

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