ジャパンコネクション

バランスオブパワー 世界サッカーの平準化

[2003.09.16]

ジーコ監督私は、スポーツ人間と云う事もあり、常に世界サッカー情勢に注意深く関心を示して来ました。現在では、日本代表監督として以前にも増して関心が深まり、色々な情報と調査を行うのです。従って、詳細な現状分析も条件的に可能なのです。特に、私の場合は日本で得た豊富な経験をベースに基準を於いてそこから世界を見つめる様にしています。現代の世界サッカーの主な特徴は実力の均衡だと云う事が日々私自身にとって明確化されつつあります。あえて現代的に表現しますと、「世界的現象」とでも言うべきでしょうか。この「実力のバランス」に対しての動機は数多くあり、例を挙げればきりがありません。

「EURO 2004 予選」では、2002W杯準優勝国の伝統国ドイツがアイスランドと引き分け、そして、イングランドがマケドニアを相手に接戦の末かろうじて下しているのです。その反面、1990以降W杯から遠ざかっているチェコが再び復活し実力を付けオランダをあっさりと破ったのです。私は、去年パリで、チェコが素晴らしいゲーム展開でフランスを破った試合を観ています。現時点では、ヨーロッパ勢ではチェコ代表が実力的にも上位にランクしているとみなしており、イタリアのユベントスやドイツのボルシア等他多くのクラブで活躍をしている選手達を有し、「EURO 2004」での飛躍が多いに期待出来ます。

「実力のバランス」の例は南米でも起こっています。W杯南米予選第2回戦を終了して時点で、王者ブラジルの貫禄を除いて、第1回戦でウルグアイがボリビアを5-1の大量得点で下したかと思えば、同じく初戦でペルーに4-1で大敗を喫したパラグアイを相手に第2回戦で4-1と今度は逆に屈辱を味わっているのです。そして、ボリビアはコロンビアと対戦し、4-0と大勝したのです。アルゼンチンは現在、チームの「RENOVATION(若返り・改新)」を図っており、例外とも見るべきでしょう。このシーソーの様に揺れ動くチームの現状は正に現実なのです。数日前に、ペルー代表の指揮を執っているブラジル人監督のパウロ・アウツオーリと話をする機会があり、彼は次の様に語っていたのです。ペルーは初戦をリマでパラグアイを4-1と大量得点で下し、2戦目をチリに2-1で負けたのです。セットプレーと云う一瞬の出来事が勝敗を決定づけ、ゲーム内容自体ペルーは大変良かったにも関わらずそれを得点へと結びつけられなかった事が敗因だと言うのです。

正しく、日本がセネガル戦を1-0で敗北を喫したケースと同様なのです。2002年W杯1stラウンドでフランスを破ったあのベストチームとほぼ同じメンバーで構成された最強チームと対戦したのです。ハイテクニック且つ長身で体格も優れており、ほぼ全員がヨーロッパでプレーをしているチームなのです。この様なチームと戦う場合、決してチャンスを逃してはならないのです。なぜなら、彼達は数少ない決定機を完全にものにするからです。試合を観た者はいかに我々が良い展開で流れを創り、勝っていても不思議ではない内容の試合だった事が解ると思います。試合開始早々、一瞬のスキを突かれ、1.93cmの長身の選手にエリア内で我がディフェンス陣が力でねじ伏せられ、ゲーム唯一の得点をヘッドで決められたのです。この様な接戦で我々は訪れたチャンスを確実に活かせなかったのです。

その他の1-0で敗戦した試合でも、状況は前述と大変良く似た内容なのです。最近では、コンフェデ杯での対フランス戦を例に挙げる事が出来ます。試合を観た人は、我々日本がフランスに対し終始優勢な試合展開だった事を記憶しているでしょう。但し、我々は決定機を逃し、フランスはキッチリとものにしたのです。最近はこの様な現状が繰り返されている訳です。正しく、「決めなければ、決められる」の格言通りなのです。

ヨーロッパは、代表の基礎作りと組織化の局面から見て、南米・アフリカ・アジア勢に対し大きな「アドバンテージ」を有しているとも言えるでしょう。紛れもなく、基盤がしっかりしており、更には短時間の移動でチームを召集、試合に臨めると言う事は特権であり、他に対し一歩リードしているのです。この様な現状から、あまり知られていない国が良い結果をもたらす事も可能になって来るのです。1時間ないし2時間で選手達を収集し代表チームを構成し、試合に臨む事が出来る訳です。日本代表監督として、普通は3日間の準備期間を有しているのですが、中には前日合流の選手も数名いるのです。正に、ヨーロッパで大事な経験を積んでいる選手達の事なのです。代表に合流するにも、遠く離れており約12~13時間の距離があるのです。彼達は大変疲れて帰国し、練習にもまともに参加出来ず試合へと臨むのです。大変困難な現実なのです。

この練習期間不足が紛れもなく代表間での実力の均衡化への大きな要因となっているのだと思います。これは世界的に侵されている問題であり、結果全体的にクォリティーへの影響を及ぼしているのです。そして日本の場合、この時間不足問題は更に深刻化するのです。選手の如何なる怪我も直接戦力の低下へと繋がり、そして時には重要な選手の収集自体を断念しなければならないケースもあるのです。セネガル戦では、ハンブルグのフォワード・高原選手への期待は放棄せざるを得なかったのです。

この様な状況からも、スコアだけを追求した場合、多くが望んでいる様な結果には繋がっていないのですが、我々のなすべき事は確かな方向性への路線に向かっていくことと見ています。もしかして、もう少し細部に亘り歩調を合わせる事が出来ていれば、皆さんへの喜びを既に与えられていたかも知れません。繰り返しますが、世界サッカーシーンは均衡状態なのです。ピッチへ向かいチャンスを確実に活かすが為にもメンタルトレーニングをしっかりと行い、我々には可能だと信じばければならないのです。今日、実力差は縮まってきており、どんな相手に対しても臆する事なく戦いに挑めるチーム創りに努めているのです。アルゼンチン、セネガル、韓国やナイジェリアと対戦したのは正に延べた様な経験を積む為なのです。スコアのみを意識し、実力的に劣っている国々とカードを組むのは易しい事なのです。でも、我々はあえてリスクを負ってでも実り多い途を選択したのです。勿論、誰もが負ける事は好まず、常に勝利を望むものなのです。それでも、強豪国と対戦する場合、危険は伴うのです。そして、我々の最終目的は日本を2006W杯へと導く事なのです。

それではこの辺で・・・
みなさんまた来週お会いしましょう。

ジーコ直筆サイン

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