ジャパンコネクション

OUT OF THE PITCH 解決すべき難題

[2003.09.09]

ジーコ監督 現在、ブラジルサッカー界を襲っている危機については、サッカークラブ及びブラジルスポーツ界全体の組織に迄及ぶ現況を冷静に分析し、その原因を解明して行かなければならないのです。紛れもなく数多くの原因を上げる事が出来、そして、賛否両論ありながらも事実上スポーツの近代化を図ったスポーツ法令も原因の一つに取り上げる事でしょう。私は、スポーツ法令が本現状への原因とされる比重は微々たるものだと思うのです。何故なら、幾つかの条項がクラブの活動を妨げたのであれば、その反面スポーツ全般に対しては大変貴重なベネフィット(利点)を多くもたらしているのです。

実際には、あらゆるスポーツコミュニティー(スポーツ団体)が新しく導入された現実、それまでクラブにとって経営の要でもあった「パス(保有権)」の消滅と云う新たなる現実に順応する事が大変困難だったという事なのですが、これに関してはその他の条項が一部代用され、特に、原則的には雇用制度がクラブと選手間を結ぶ規則となったのです。サッカー文化に於いては2度の過度期に面した訳です。1回目は、光栄にも私の名前が付き、後にはペレーの名前が付けられた二つの法令以前と、2回目はこの二つの法令及びこれらに暫定的変更が加えられた以降なのです。

事実この法令により発展的展開がみられてはいるのですが、サッカーに対しては何らかの傷害を与えているのが現実なのです。先ず、私が最重要課題だと判断するのは、いかに選手を育成したクラブに対して合法的な「プロテクション(保護)」を与える事が出来るかなのです。この問題がブラジルサッカーにとっての生命線へと発展して行くのではないかと私は思うのです。タレント発掘とその育成がサッカーにとっては支柱であり、色々な理由からもこの分野は圧倒的に小規模クラブが過去より取り組んで来たのです。その幾つかの理由とは、①小規模クラブの比率がビッグクラブに対し圧倒的に高いこと、②小規模クラブの方が若年選手達の住んでいる地域に隣接していること、③小規模クラブの方が誰でも簡単にアクセスが出来ること、④小規模クラブとビッグクラブのプライオリティー(優先)に対する価値観の違い、⑤他に大きな目標が持てないプロフェッショナル達の献身、等が上げられるのです。

これらの小規模のクラブ勢は、合法適には法に守られているとはいえ、実際には何年という年月を何の見返りも無く選手の育成に専念し、そして最終的にはビッグクラブからの攻撃に対し防衛策がないのが現実なのです。もう一つ急激に進展しつつある大きな問題は、常にクラブと密着しており、かつ選手、更にはその家族迄取り込み仕事を展開する、「エンプレザーリオ(代理人)」の急増なのです。選手とクラブ間の絆の脆さ、特に小クラブは長期及び高額契約を選手と締結する余裕が無い事が「エンプレザーリオ」達の出現を促進した事は紛れもない事実でしょう。これは一概にサッカーにとって悪い事だとは言えないのですが、但し、実践ではこの関係図から二つの問題が生じているのです。それは、先ず現状打開への勧誘又は魅力的な誘惑等に惑わされる事も含め、選手は常にクラブに対して不満を持っている事です。そして第二に、移籍等の如何なる交渉に伴うクラブ又は選手本人への金銭的収入のかなりの部分が仲介人への手数料又は報酬として流れてしまう事なのです。

決して私は「エンプレザーリオ」の仕事を否定しているのではありません。ましてや、彼達はクラブ経営陣達と共存している訳です。私が批判しているのは、数と質に於いて過剰すぎる事なのです。どちらにしても、この様な問題はあくまでもブラジルサッカー界が抱える問題の僅か一部なのです。最大の問題は法令などに依存しているものでは無いと思うのです。ブラジルサッカー界自体のオーガニゼーション(組織化)が他国と比較して余りにも好対照なのが現実なのです。この様な状況が誰も選手を抑制出来なくしているのです。さほど遠くない過去には、有名な「クラッキ(名選手・天才)」のみが、到底ブラジルのクラブには太刀打ち出来ない移籍金を積まれ、世界の権威あるスポーツ大国のクラブへと「輸出」されていたのです。更に、選手達は現在よりもプロとして成熟期を迎えた年齢で移籍をする事で、海外での成功の可能性も遙かに高かったのです。現在では全く違っており、彼らは何処の国へでも移籍して行くのです。これから才能を開花させ将来的に評価されるであろう若き世代の多くの選手達がサッカー無名国へと旅立っていくのです(実際に必要であれば、この才能開花時点で交渉されるべきなのです)。

海外のクラブからのオファーに対し、ブラジルのクラブが契約している金額又は支払うべく約束を交わしている金額でも十分に彼達を国内に引き留めるに値する事が多々あるのです。それにも関わらず彼達は、報酬が支払われると云う保証、プロサッカー選手生命の安定性、更には自分自身及び家族の生活を支えられる安堵感を求めて海外への移籍を選択するのです。そして、もしかしたら一番深刻な問題が、クラブに多額の損害を及ぼしている、「カレンダー問題」では無いでしょうか。紛れもなく、余りにも乱雑した、出場チーム自体が多すぎる、数多くの大会が並行に開催され過ぎなのです。更には、スポンサーやファンの興味を奮い立たせるが為の計画性も全く欠けているのです。各ディビジョンのブラジル全国選手権は最大18クラブにより開催されるべきなのです。コッパ・スール・アメリカーナ(南米カップ)に関しては以前開催され芳しく無い結果に終わったニューバージョンのモデルにも関わらず継続する事にあくまでも固執しているのです。

過去、素晴らしい結果と感動を生み続けた州大会は現在完全に破滅状態です。正にこの州大会でクラブ間同士の高いライバル意識が芽生え、スタジアムを満員にしていたのです。誰一人この現状にさほど真剣に目を向け原因を追及し解決策を見出そうとしていないのです。大会日程は前もって決定され、尊重されるべきなのですが、現実はうらはらなのです。私自身が経験した実例を上げますと、CFZ do Rioのジュニオーレスのカテゴリーは州大会を3回優勝しているにも関わらず、プロチームに随行しなければいけないと云う理由(プロチームは2部)で1部へ昇格出来ないでいるのです。これだけではきっと理解出来ないと思いますので、もう少し解りやすく説明をします。選手育成に於いて最重要カテゴリーであるジュニオーレスとインファンチルはリオ・デ・ジャネイロ州2部の大会に参戦し、優勝しながらも1部へ昇格出来ないのです。何故なら、ジュニオーレスは上のカテゴリーであるプロ、そしてインファンチルはそのすぐ上のジュベニールの所属ディビジョンに基づいてランク付けされるからなのです。

もっと最悪なのは、どちらのカテゴリーも大会で最下位であっても成績に関係なく上のカテゴリーであるプロ又はジュベニールが昇格する事でジュニオーレス又はインファンチルも自動的に昇格出来るのです。この様な現状からも、ブラジルサッカーが法令などに依存するのではなく、首脳陣達のプロ意識と「フッチボール・ペンタカンペアォン・ムンジアル(W杯5回優勝国)」を取り巻く問題を敏感に感じ取り解決策を見出して取り組んで行くかなのです。

それではみなさんまた来週お会いしましょう。
ヨロシク!

ジーコ直筆サイン

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