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永遠に忘れられぬ一夜

[2003.08.12]

ジーコ監督ある火曜日のこと。その日は朝から綺麗な青空で、とても熱い夏の快晴な一日の始まりだった。但し、夕暮れと共に空には雨雲が立ちこめ始め、夕立を予感させた。その夜は、地球上のスーパースター達を有する世界一のクラブのゲームが開催されるのだ。真のきら星の如く輝く名士群集である。勿論、天気の神様もお力添えをしてくれるはず!

東京ドームで行われたレアル・マドリードの練習には4万5000人のファンが足を運び、更には国立競技場で開催される試合は満員の5万5000人の観客で埋め尽くされる予定である。私も、遙か昔一サポーターとして胸をときめかせながらスター選手達を観にフラメンゴの試合に行ってた若き時代を思い浮かべながら、国立へ観戦に行ったのです。スタジアムへ着き次第、出場選手リストを手にし、少々寂しく感じたのです。なぜなら、そこにはジダンの名前が見あたらなかったからです。でも、ロナウドとロベルト・カルロスの名前が控えのメンバーに入っており、最低45分間は世界ビッグ5の選手の内4名はグランドでプレーする姿を観られる確信が持てたのです。ベッカムとルイス・フィーゴは既に先発が決定していました。

キックオフ!スタジアム中で開始と同時に日本人特有の写真攻撃のカメラフラッシュが輝き続け、フレンドリーマッチのリズムで試合が始まる。相手はJリーグ1stステージ4位のFC東京。フィーゴがセンター、そしてベッカムは得意の右のスペースを埋めるようなポジショニングをキープ。何となく、レアルが思うようにゲームを展開しずらそうに見える。立ち上がりは攻守共に五分五分。でも徐々にレアルの技術力が勝り、攻勢になり始める。そしてここで大事なポイントは、前半30分頃にベッカムとフィーゴがポジションチェンジを行った事である。マケレレの横、センターで彼は実力を発揮し始める。正確なパス、鋭いシュート、そして抜群のポジショニング感覚。素晴らしき才能溢れるチームメイト達に恵まれ、彼の成功への道しるべは整っているかの様に思えたのだ。まるで映画がクライマックスシーンを迎えるかのように!最強と呼ばれる軍団は彼の加入によって今後は何と定義されるのでしょう?

目が覚める様なパスワークが観客を魅了し始める。前半は2-0で終了。先ず、ベッカムが得意の素晴らしい曲線を描く様なFKで移籍後初ゴールを決め先取し、2点目は相手GKからの零れ球をソラーリが決めたのだ。このゴールを生み出したのは、フィーゴからラウルそしてポルティージョに渡る鮮やかなパスワークからであり、これを最終的にポルティージョが強烈に放ったシュートを相手GKが弾いたのである。

そこで、ロナウド、ロベルト・カルロス、そしてアルゼンチンの才能溢れるカンビアッソがウオーミングアップしている姿が目に入り、私は、ベッカムとフィーゴは交代しないでピッチに残る事を密かに願うのである。そして、私及び全てのファンの願いが叶い、後半4人の超人がピッチに姿を現したのだ。ここにジダンが加わっていればと思うと…。

それ以降は、言う迄もなくただひたすら魅了の連続!この場にアルマンド・ノゲイラ(サッカーナレーター)がいれば素晴らしいフレーズの連発は疑いなし。ロベルト・カルロスのヒールでの巧みなボールコントロール、又はダブルRを用いての聞き入る様な美しいポエムの数々が飛び出した事は間違いなし。ロナウドからのラウルへの連携パス、そしてロナウドの得点に結び付いた美しいプレー。狭いスペースを突いてロナウドがフリーで受けたベッカムからの正確なセンタリング、そしてフィーゴのトリベーラ(外指3本)でのトリッキーなラウルへのボール供給など、サッカーフリークには耐えられないファンタスティックなプレーの数々の披露。これ程サッカーを堪能出来たのは久々の出来事です!足から足へとボールを巡らし瞬きをも容易で無いパスワークでファンを熱狂させた1981年のフラメンゴ時代を懐かしく感じさせてくれたのです。試合は3-0で終了。私は、まるで玩具を貰った子供の様に幸せ溢れんばかりの気持ちで席を立ったのです。でも、今宵は未だ長く、これから私を待ち受ける感動の数々など知る術も無かったのです。

私は、ロナウドとロベルト・カルロスに挨拶する為に更衣室へ向かったのです。そこで、快く迎えてくれたのが、レアル・マドリード歴代の名ストライカーで、現在同クラブの権力者の一人でもあるエミーリオ・ブトラゲーニョ氏だったのです。その直ぐ後ろには有能なマネージャーであるホルヘ・バルダーノ氏がいたのです。そして、この伝説的とも言える最強軍団を編成した一任者ではないかと私は思っているのです。バルダーノは私を抱きしめ、「サッカーに魂があるのであれば、その名はジーコだ」と言ってくれたのです。その好意に私は驚きとまどいを隠せなかったのです。この表現は、バルダーノ自身招待客として参加してくれ、1990年に行われた私の引退試合でフラメンゴが送ってくれた「言葉」なのです。

バルダーノとブトラゲーニョに成功の意を伝え、何故ブラジルではサッカー選手達は彼達のようなポストに就かないのかを考えたのです。フランツ・ベッケンバウアーとルメニゲのバイエルン・ミュンヘンとの関係、ベテ-ガとユベントス、そしてミランで同様な道を歩み始めたレオナルドを思うのです。これはあくまでも一例であり、ヨーロッパのクラブではもっと数多く名前を挙げる事が出来るでしょう。彼達は、政治的意欲を持たず、ひたすらチーム強化のみを使命にするサッカーを知り尽くした真のプロフェッショナルだと思うのです。バレーボール、バスケットやその他の種目出身に対して特に反対をしているのでは無く、あくまでもサッカー選手はこのポストを担うべき準備を進めて行かなければいけないのだと言っているのです。

ロベルト・カルロスとロナウドと一緒に更衣室を出て、アジアツアー、ブラジル、そして日本代表などに付いて色々と語っていたのです。すると、そこにフィーゴが現れ、「私は彼の幼年時代からのアイドル(憧れ)だった」と言う発言を聞き再度感激させられたのです。彼は30歳で私は既に50のおじさんにも関わらずに!世界のベストプレーヤー三人に面し、その内の二人は私が子供の頃からのアイドルだったと面と向かって言ってくれるのです!常に言っている事ですが、このサッカー仲間達の尊重心と愛情が私にとって人生最大のタイトルなのです。世界サッカーの発展の為にも、彼達のアジアツアーの成功と素晴らしき年末を願い別れました。

そして私は、家族と友人達とでスタジアムを後にしたのです。全員でレストランへ向かい、私の大好きなイタリアワインを吟味しながら今日と云う日に祝福をあげたのです。最後に、永遠に忘れられぬ一夜を授けてくれたサッカーと神様に敬意を表し心から感謝を致します。

それでは皆さん、また来週お会いしましょう。
ごきげんよう!

ジーコ直筆サイン

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