ジーコの部屋

Sonho ruim 悪夢

試合前などで行う合宿の良いところは、選手同士が親密感を増したり、意見を交換したりして試合に対する意識を全員で深めることである。雰囲気を良くするには楽しい冗談話は不可欠である。私はサッカーを通じて友人をたくさん作ったが、その中にはフラメンゴやブラジル代表合宿などで相部屋になった選手が何人もいる。

クラブで日々一緒にいる仲間たちは、グループから進化して家族的な関係にもなる。そうした友情の絆は時には、サッカーの壁を越えてそれ以上のものになることもある。実際には各々が1個人として生きていて、個人的な喜びや悲しみを分かち合いながら過ごしていた。個人的には、例えば、朝早く起きるのが大変だったし、デザートにはイチゴが必要だった(イチゴの話はこのコーナーでもテーマになった)。

私が述べたこのような日常は、あの80年代のフラメンゴでは当たり前だった。こんなに前置きをしたのは、またまたあのわれらの友人、アラゴアーノのペウーの話をするためだ。大事な試合を控えた前日からの合宿でのこと。ペウーはその時に神秘論者的な面を見せてくれた。試合の事が心配だったのかどうかはわからないが、彼は悪夢にうなされて恐怖と共に目覚めたのだ。彼は朝目が覚めると、朝食の場所にやって来て私に言った;

「ジ、ジーコ、僕は心、心配、だよ。す、すっごい怖い、ゆ、夢をみた・・・」
(ペウーは普段から口ごもる方だが、怖い思いをしたりすると余計に悪くなる)

ペウーが心配そうにしているのを見て、とっさにからかってやろうかと考えたが、直ぐにやめた。何故なら彼は余りにも真剣に夢、と言うより悪夢のことで心配していたのだ。私達はその夢占いをしてやろうと言った。彼を疑問から解いてやる気持ちが働いたのだ。

「ペウー、落ち着けよ。まずその君が見た夢というのがどんなだったか話してみなよ。そんなに君を心配させるのかい?」

「う~~~ん、ジ、ジーコ。そ、それが、な、なにも覚えていないんだ。何だかわからん、けど、歯、歯が壊れていたような・・・わからねえ。」

ペウーはとても緊張していて、これだけ言うのにも随分時間がかかった。私は夢占いである一つの事を思い出した。私の母が子供の頃に良く口にしていた事なのだが、それが頭の隅にあって、ふと出てきたのである。私はつい、深く考えないままに言ってしまった。その言葉がペウーにどのような影響を及ぼすのかを考えずに。
「なんだそりゃあ、ペウー。夢の中に歯が出ると、近い親戚で誰かが亡くなるんだぜ!」

言ってから後悔した。私の言った事でペウーがもっと慌てふためくのではないかと思った。彼は即返事をした・・・。

「そ、そりゃあ、安心した、ジーコ!!」

「どうして? ペウー?」私は怪訝に思った。

「ぼ、ぼくは、安心した。ジ、ジーコ、僕は、この、リオには、誰も親戚はいないよ。皆、アラゴ、ゴーアスに居るからね・・・。」

最近になって彼がテレビに出ているのを見て電話をした。そこでこんな思い出話をして笑いあった。ペウーはいつも笑話の提供の主人公でもあった・・・。




2004.10.20

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