ジーコの部屋

O caminho de Manchester  マンチェスターでの道

私が日本代表で最も気に入った結果は今まででは間違いなく、マンチェスターでイングランド相手に1-1で引き分けた試合だ。今年の6月1日だった。親善試合だったが、イングランドはあのベッカムを擁するチームでユーロ選手権を控えて準備していたので、ほぼフルメンバーだったのだ。
私達はあの試合に期待感を膨らませていたし、引き分けに大喜びしたものだ。本当だったら勝っても良かったくらいだ。  

出来事はその後に起こった。喜びの後に驚きが来たのだ。いつも言うが、何かをやろうとしている時、ほとんどの場合が集中して最大限の力を出して目的を達しようとするものだ。それが出来た時には、その後に気が緩んでしまうのは普通だ。そんな時に事件は起きた。  

代表団は気楽な雰囲気でホテルへ向かうバスに乗り込んだ。ゴルフ場の中にあるとても雰囲気の良いホテルだった。バスは発進し、暫く走っているうちにどうも見た事がない所を走っているのに気が付いた。私はこれでも方向感覚は良い方だったからおかしいな、と思った。だが彼等はもう私達が来てから4回も別のコースを通っていたからそう気にもしていなかった。

向こうへ行って狭い通りを抜けた。別の路地に入るが戻る。バックまでして坂道を登りだす・・また戻る。私達のホテルは?何処にも見えない。そうこうしている時間はもう30分を過ぎているし、それを私の腕時計が証明していた。いつの間にかバスは山の上に出ていた。リオのキンタ・ダ・ボアヴィスタに似ていた。運転手を見ると、冷や汗をかいているではないか。なんと言うことだ、私達はマンチェスターで迷子になっている!本当に迷っていたのだ。

その状況は少しも良くなる事を期待できるものじゃなかった。案内のガイドは既に帰してしまっていたし、英語を話す者も少なかったし、大体マンチェスター周辺を知っている者などいるわけが無い。運転手自身その知らない者リストに入っていた。もっと怖い思いをしたのは、道もよく判っていない運転手は下り坂を高速で走り出したのだ。選手達は慌てた。中にはバスの天井にくっ付いているのもいたし、無口になって何か祈っているのもいた。もし対向車線に車でも現れていて、バスの速度がそのままだったら恐らく私は今、ここでこんな話をしていないと思う!夜は更けて夜明けが迫る。

皆で運転手を落ち着かせるようにして、誰か道を教えてくれる人が居ないか捜し歩いた。またしてもあっちへ動き、向こうへ降り始めた。何だかずっとそんな事をしていくのかとも思われた時間だった。やっとのことで山から抜け出すことが出来て正しい道に出たのだが、このオペラの結末の、ホテルへ到着まではなんと2時間も掛ってしまったのだ。真っ直ぐ行けば30分の道程なのに。余計なアドベンチャーを体験させられて全員がハラペコになっていた。試合後の様にリラックス出来たのは夜明け近くなってからだった。 
それは代表団にとって教訓になった。現在では海外で移動する時には必ず案内役を乗せることにしている。それに運転手がバスを出す前に必ず誰かが確認の質問をしている。 
「君は道順を判っている????」



2004.11.10

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