ジーコの部屋

Haja preparo!  大変な準備だ

ペウーはいつもこのコーナーでの話の主役として出て来る。今回は元フラメンゴで古い付き合いのある彼に敬意を表して、我々が共にした逸話の一つを語らせてもらうことにする。ただ、今回のペウーは主役じゃなくて語る方である。

ペウーは小さい時からアラゴアス・サッカーで起きる珍場面などの話を聞きながら育って来た。何処までが本当なのか判らないのはそれなりに立証する証拠も証人もいないからだ。それでもどれもが読んだり聞いたりする面白さはあった。ペウーはそんな環境の中で育った。それがいつの間にか自分自身がサッカーをしていない時でも逸話の一部に巻き込まれて行き、スポーツの中で色々と話しの種を撒き散らして来たらしい。

そんなペウーは試合前日の夜などに、アラゴアス・サッカーの話をよく聞かせてくれたものだ。リオでも遠征時にも。その時は、彼は独特の話し方で押さえるように話し出す。70年代の終りでフラメンゴが遠征した時だ。いつものように話し出したのはアラゴアス州の二つのチームが決勝を行なった時のことだった。大体こんな内容だった。

街は決勝を迎える週に入っていた。一方のチームは優勝が確実と言われているチームでクラッキ(名選手)もいてトロフィーを手にする準備が出来ていた。もう一方のチームは選手権でも予想に反して飛び出したチームだった。"不運"なチームとも言われながら次々と相手に勝利して来ていた。ピッチでは選手が飛ぶように走り、相手を疲れさせたところで冷静に勝利していた。マッサージ師までがロケットの様だった。なにしろ選手が倒れると、彼等は100メートルを10秒以下で走っていたのだ!

皆が止める事が出来ないあのチームはいったい何なのかを知りたがっていた。それが街角のバーなどで話題になっていた。状況は優勝候補のチームスタッフを心配させた。決勝は2試合行うが、優勝候補チームは1試合目でどうなるかを見ることにしていた。そしてがっかりした!レフェリーが笛を吹いて始めた試合で彼には"不運"の前線部隊しか見えなかった。こっちでパス・・・あっちでパス・・・それにとてつもない走りだ!休むことなくボールが相手陣地深く飛んで行く。そこに"不運"の選手達は楽々とエリアに走りついている。一点、二点、三点・・・それぐらいだったか。この3-0は"優勝候補"にとって大変な状況になってしまった。

試合翌日、役員とスタッフは状況打開の会議を行った。まず体力を同じレベルにしなければならない。だが、時間が少ない。一人のスカウトがスパイのように相手チームが何をしているのか探ってくる事にした。翌日その報告がされた。答えはこうだった:"不運"は選手権前から夜明けにトレーニングをして来ていると言う。明け方5時には選手全員がフィジカルトレーニングを街の森でやっていると言う。なんでもそれはヨーロッパの方でやっている方法だとか。それが効果を出していたのだ・・・

このニュースに驚いたクラブの会長は、この一週間を使って練習を強化するしかないと考えた。それ以上に相手より早い時間に。そして指示は出された。水曜日の朝4時、選手達は起こされた。何が目的なのか良く解からないまま。

フィジカルコーチは手を叩きながら選手を走らせようとしている。"いち、にい・・さん、しい。いち、にい・・さん、しい。"と合唱しながら森へと向かって走って行った。森の奥へ向かって行くに連れ、奥から足音が聞え段々大きくなって来ていた。こっちが"いち、にい"と掛け声で行くと、"さん、しい。"と言う掛け声が近づいてきた。なんの事はない、現れたのは不運チームであり、彼等はすでに行って帰って来て居たのだ!!

もうどうする事もできなかった。不運チームはついに優勝トロフィーを獲得した。それも歴史的な5―0というスコアで!候補チームの選手達は睡魔に襲われピッチに倒れたとか、それが未だに街では語り継がれているそうだ。

げらげら笑いながらも仲間達はペウーの話を疑っていた。その彼は真面目な顔をしたままで、実話だと頑張っている。本当かウソかは別にして、フラメンゴはあの時代に飛ぶようではあったが、明け方のトレーニングはしていなかったね。でも仲間達はペウーが話す様子を聞いているのが楽しくてしょうがなかった。偉大な人物、ペウー!

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