ジーコの部屋

Quarto de hotel ホテルの部屋

このコーナーではサッカー界に存在する不思議な習慣や癖などをテーマにしている。いつも何気なく言われたり行動したりしている迷信めいた事は時に理解が出来ない事がある。ところがいつも一緒にいると、初めは気になっていた事がなれてきてしまったり、より変だと思ったりする事がある。

大体は癖と言うものは運・不運に関係している。1976から78年に掛けて私はフラメンゴでFWのルイス・パウロという仲間とプレーする機会があった。それほど極端に怪しげな人物ではないのだが、理解できないような特別な癖を持っていた。

いつもの国内遠征“バイ、バイ、ブラジル”で始まった事だった。遠征先のホテルでは何度か彼と同室になった事がある。私達が出かける時や、用事で部屋を出る時にルイス・パウロは、ある事をするのを忘れなかった。部屋のテーブルの上に当時のブラジルの紙幣10クルゼイロ札を一枚置くのだ。そして部屋に帰って来るとそれをなにもかようにまたサイフに戻すのだ。

もっと気になったのは、滞在の日々が普通何事もなく過ぎている時には彼はそれをやっていない。しかし、ブラジルを回って泊まるホテルが違ったりすると、彼はまたそれを繰り返して10クルゼイロ札をテーブルの上に置くのだった。初めのうち私はそれが一つのオマジナイなのかと考えていた。ルイス・パウロが、それで何か運でも呼んでいるのかと。しかしどうもそれもたいした理屈など無い事が解ってきた。

ある日、私は彼にその行動は何の意味があるのかを聞く事にした。何故、あのようにテーブルの上に10クルゼイロ札を置くのか?その前に他の仲間たちにも聞いてみた。ルイス・パウロと今まで同室になった選手たちは、口をそろえてその行動に気がつき、不思議に感じていると言っていた。そこで、私は彼に質問をしようと思った。私は実行に移した。いきなり最初のチャンスがきた。彼がお札をテーブルに置くのを遮るようにして聞いた。

「あのさあ、ルイス。君がいつもそのお札を部屋から出る前に置くのは、どういう意味があるのか教えてくれないか?」 

ルイス・パウロは真剣な顔をして、このミステリーを解き明かしてくれた。 

「テストをしているんだよ、ジーコ。この部屋に入れる人達に対してね。ホテルの部屋は安全で大丈夫だとは解っているけどさ、僕らはいつも用心しなくてはね。始めの日にお札が無くなれば、それは後でもっと酷い事になるだろうことを僕らは解るからね。だから人が代わったと解った時に僕は、またお札を置くんだ。一つの安全確認さ。」

私は笑うしかなかったね。そんなのルイス・パウロのとんでもない理屈だよ。もしお札を持って行く誰かがいるとすれば、その時に他の物品も持って行く可能性があると思う。その時を利用するのが普通だと思うし、もし後でまた同じ場所に戻るとすれば、そのやり方はあまり利口ではない。だけど、それよりもだよ。誰かの不誠実さを推測するのは決して良い事ではないね。実際にお札が無くなった事など一度も無かった。あとで解ったが、ルイス自身は人を疑っているという事ではないらしい。要するに彼はそれをしなければ気が済まない癖である事だった。

その後も相変わらずだった。私達が一緒になって何処へ行くにもルイス・パウロの荷物には必ずもう一つおまけがついていた。それは10クルゼイロのお札・・・・・。

 

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