ジーコの部屋

Pes muito frios - I
不運を呼ぶ男 その1 (ペー・フリオ“冷たい足”運の悪い人のことを言う)

サッカーの世界では迷信というものもひとつの話題とされている。以前にもジンクスの話はした事がある。クラブ役員や選手、監督・・・誰にでもあるがとにかく勝つ為にはなんでもありで色んな事をしてみるものだ。運を呼ぶために様々な儀式めいたことが存在する。

その一方では多くの人から一人の人間に対して、その人物に何故だか負けてしまう要素があると指摘される場合がある。それが原因でキッカーに絶対決めるはずのゴールを失敗させたり、デフェンダーに恥ずかしい限りのミスをさせたり、キーパーは簡単に股を抜かさせてしまう。これが“ペー・フリオ”なのだ。多くはそんなものは非現実的な事だというが、私が20年以上ものサッカー人生の中で、何度かこういう状況に出くわしてきた。普段はとても良い人達なのだが、ただその人が試合に行くと・・・まず負けるのは確実だった。

中でも大変恐れ入ったのは日本にいる時の出来事だった。私が鹿島アントラーズのテクニカル・デレクターをしている時にフラメンゴのマスターズと遠征に出かけていた。私達の通訳はとてもいい人で、その中にイザワがいた。私達は彼のことを“レイチーニョ ( ミルクちゃん ) ”と言うニックネームで呼んでいた。何故なら顔が凄く色白だったからだ。

言った通り、イザワはとてもいい人だった。だが、彼が行く鹿島の試合はいつも負けていた。私達は彼に試合には行かなくてもいいよと伝えた・・・私は試合に行く事を禁じたくらいだ ( 笑 ) 。しかし、フラメンゴのマスターズが来ていたので、彼を連れて行くことにした。ところがだ!!バスで2時間の移動が7時間もかかった。ジュニオールは今まで起こした事もない肉離れを起こす。試合開始20分でこれまた珍しくパウロ・セルジオが退場になった。何しろいろんな事が起きたのだ。あの試合には。その場所にはイザワが居た・・・。 

さて東京に戻り、別の試合の為に移動していた。鹿島アントラーズはジェフ市原との試合をする為だった。その試合はとても大事な試合だった。合宿するチームを訪れて、ふとあの“ペー・フリオ”の事を思い出した。急に私は心配になった。そこへジョアン・カルロス監督とマルセーロ・コーチがやって来た。私は彼らにイザワに電話してフラメンゴマスターズをスタジアムへ連れて行くように指示した。しかし条件を付けると言った。 

「アロー、レイチーニョ。君に頼みたい事があるんだ。フラメンゴの仲間達をスタジアムへ連れてって欲しい。だけど君は外に出て待っていてくれ。真面目に言ってるんだよ。大事な試合だからね。」 

ジョアン・カルロスとマルセーロは私を見て、同時に言った「本当にそうするのかい?」私は即答した「そう。勝ちたいからね」。

そして、試合結果は鹿島が3対2で負けてしまった。私は面白くなかった。だが話しは続く。私はアントラーズチームと別れてフラメンゴの仲間達の所へ向かった。出会い頭にレイナウドが私に近づき言った。

「ジーコ、言いたくは無かったけど駄目だ。喉元につかえていて気持ち悪いから言うよ。聞いてくれよ。俺たちはスタジアムに遅れて着いた。鹿島が1-0で勝っていたよ。我々は中に入ってイザワは外に出た。鹿島が2点目 を入れた。よしよしと、気楽にしていたらイザワが入って来たんだよ。後は起こるべくして起こったね・・ジェフが逆転した!!」

私は怒った。ジョアンの所に戻ると、「言ったじゃないか!!君らは可愛そうだなどと言うからまた負けてしまった。彼は本当にペー・フリオ以上だよ!しょうがないよ。イザワは絶対に試合に行っては駄目だ!」まるで冗談みたいだが、まったくの真実だ。  

イザワのそういう話題は凄いもので、私は彼の伝説まで考え出したくらいだ。それは彼が鹿島の勝つ試合を見た事がないという事だ。おかしな事に彼自身もその伝説を信じていた。イザワは何度も試合を見に行く中で、勝つ事がまれにあると言う事にもかかわらずに。でもそれはその2で語ることにしよう。

>一覧へもどる