ジーコの部屋

O segredo da energia エネルギーの秘密

このコラムでは、多くのサッカー選手がそのサッカー界の中に存在し体験している、否定される事が多いであろう神秘的で奇妙な話を紹介してきた。大げさな度合いのレベルは強弱があると思う。しかしそれ以外にも、たくさんの癖や習慣があってそれが状況によっては大変重大な意味を持つ場合がある。現在、清水エスパルスの助監督をしているカルロス・アウベルト・サントスの場合もそうである。彼は色々なクラブチームでプレーし、ボタフォゴでもプレーした。私とは90年代前期に鹿島アントラーズでも一緒にプレーした。彼はいつも包みを試合に持って歩き、ピッチに入る前に何かをつまみ食いしていた。それは何であろうか? 

この友人であるサントスの話は日本でJリーグが始った1992年に起きた事である。93年のJリーグスタートを控えてプレ大会が行われた。翌年にリーグを戦う10チームでの大会である。この大会のルールは少し変っていた。勝利点は4ポイントで2得点する度にプラス1ポイント。例えば4―2のスコアだと勝利者は6ポイントで敗者は1ポイントとなる。これは得点意欲を掻き立てるルールだった。 

さて、大会では私達は敗戦もしたが、名古屋に7―1で勝った。そしてベスト4を決める決勝トーナメントに入ることが出来た。サントスは相変わらず包みを開いてはあのつまみ食いをしていた。それが彼の秘密兵器だった。 

予選最終節には広島まで出かけてサンフレッチェと戦う事になった。その時の状況はこうだった

鹿島が広島に2-0で勝って、マリノスが負けたら、鹿島は4位に入ることが出来た。4位に入ればルールで1位と4位、2位と3位が試合をする事になる。その勝者同士が決勝を行う。試合前、サントスは私に近づくと言った; 

「ジーコ、これをちょっとかじってみて。君は20歳の若者見たく走ることが出来る。一つの妙薬だ!」

まあ、一般的に知られている糖分やチョコレートなどの食品はエネルギーを補充するために良いとされている。ブラジルの田舎出身者である彼は、サトウキビから作られた田舎産の純粋な「ハッパドウーラ」(黒砂糖と同類)の塊を持っていたのだ。こりゃあ真のエネルギー源に間違いない! 

私はちょっとためらいがちにハッパドウーラをかじろうか、どうか迷っていた。果たして効果がある物か?答える前に彼はまた決定的な言葉を言った。

「今日は得点が必要なんだよジーコ。2点は取らないとね。この妙薬は不滅なものなんだ。もう何年も存在している!」

確かに彼は中盤でのプレーに関してとても良い体力を誇っていた。私は彼の言葉を信じハッパドウーラをかじる事にした。どっちみち体に悪い訳じゃないしね。かえって40才に近い私には良かった。それに大体みんな年を取って来ると、このような色々な外部からの助けを身体に求めるようになるものだ。

私はハッパドウーラをかじり、試合結果は3―0でサンフレッチに勝った。誰が3点取ったか解るかな?さらにマリノスも負けた。ベスト4に進出し、鹿島のブラジル人達に取ってハッパドウーラは神聖なる食べ物となった。フラメンゴ時代にドミンゴ・ボスコが用意してくれた私のイチゴと同じ事だった。

しかしこのハッパドウーラにはこだわりがある。神聖なハッパドウーラは白くてブラジルから特別に持って来たものでないと駄目なのである。そしてこの出来事から試合にはいつも“マトウット”(田舎の人、未開地の人)のハッパドウーラは欠かせないものとなった。“マトウット”とは私達がサントスの事を愛着を込めて呼んでいたニックネームである。偉大で個性豊かなエクセレントなプロフェッショナル、サントス。

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