ジーコの部屋

O carate do Merica メリッカの空手

80年代のチームで選手たちを巻き込んだイタズラの話を最近していなかったね。このコラムでもあのメリッカの名前が随分長い間出ていない。メリッカを知らない人達に簡単に説明すると、フラメンゴに所属したことのあるブラジル北部出身の選手で、70年代後半から81年のトヨタカップ制覇までプレーしていた。

そんなメリッカを、私達はいつもからかうターゲットにしていた。彼自身は、なんとかそれに仕返しをしようとしていたらしい。まあ、前にも述べたと思うが、私達は民主的であったのだ。新人が入る度に、以前からいる選手達の洗礼を受けるのが通常だった。メリッカが田舎を後にし、新人として入団して来た時もそれに変りは無かった。

彼はその仕返しをしてどうやってやるかを考え、そして空手の真似事を思いついた。これは誰もが知っている遊びだね、大体は、誰かが新聞などを読んで夢中になっている時にやっていたね。

それは:メリッカがホテルのロビーや合宿で見張りをしている。誰かがやって来て、ソファに座って新聞を読み始めるのを待っているのだ。大体はピンク色のスポーツ新聞である。そして静かにしていた。選手はおもむろに新聞を顔が隠れるほど広げて読んでいる。後は一息いれてメリッカの叫びを聞くのを待つだけだった。

「イヤアアアアアアアアッ!!!」

彼は飛び出して新聞を払いのけ、空手の一撃を加えたかのように新聞を飛ばした。読んでいた本人は驚きの顔。メリッカは笑うのを堪えながら言った。

「空手だ!メリッカの空手だぞ!」

彼はそんなことを何回と相手を変えては繰り返し、みんなをイライラさせていた。遠征などで私達はよく新聞を読んだ。メリッカがいないか注意しながら読むが、それでもつい油断をしてメリッカにやられてしまう奴がいた。そのたびに「イヤアアアア!」と言う叫びを聞いていた。

その内にメリッカはチームのほぼ全員を被害者にしてしまう。指導部のスタッフまでそのリストに入れてしまった。報復の日はやってきた。私達は彼が一生忘れる事が無いだろうと言うくらいのイタズラを仕組んだ。

提案者でオトリになったのは、ジュニオールだった。ソファに座る前に近くにメリッカがいないか確認をした。他のメンバーは全員周りに隠れていた。仲間の一人がメリッカのところに行き、ジュニオールがいる事を告げた。私達のターゲットは罠にはまりやって来た。何も知らずにメリッカは、スキを覗って、いつものように飛んで行った。

「イヤアアアアアアアアッ!!!」

一撃を食らわせたかと思いきや、次の瞬間メリッカの悲鳴が響いた。

「痛い、痛い、痛いよ、僕の手が!手が・・痛てっ!!」

隠れていた全員が現れて、罠にはまったメリッカを囲み大笑いをした。ジュニオールは単純に新聞の真中に石を挟んでいたのだ。メリッカ空手の一撃は、その石にあたり途中で止まってしまった。メリッカは、気の毒なくらい手が痛かったようだ。私達も心配するくらいだったが、それが教訓となり彼は、二度とその遊びをやらなくなった。それを誰かが聞くと、もう格闘技は辞めることにした、と彼は答えていた。  

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