ジーコの部屋

O bigode do Peu  ぺウーの髭

ここではもう何度も話題の主役を演じてくれる80年代のフラメンゴにいた、とてもユニークな民族的アタッカー、ペウーについて、彼はとても素朴で、言い換えれば単純なのだが、私達の話を直ぐ信じてしまい、そのため我々フラメンゴのチームでは時々悪ふざけの中心になっていた。

彼を巻き込んだ面白い話の中に、東京へ遠征した時の事がある。私達の最も貴重なトヨタカップのタイトルを制覇した時だった。ロスアンゼルスから東京に向かったが、これほど長い旅をしたのは選手達の中でも少ししかいなかった。 ペウーも初めての一人だった。彼は飛行機の中に入ると、自分の座席に納まりそこにじっと大人しくしていた。

フライトはとても長く疲れるものだった。何時間か経って、少しリラックスするために私と何人かの仲間でペウーに何か企むことにした。私がアイデアを出すように決められた。リベルタドーレスを制覇するのに随分と苦労をして優勝した。それもあって選手一人一人が早く対戦相手のリヴァプールに勝ってカップを手にしたい気持ちでいっぱいだった。そこで、そういう気持ちに水をさすような事をして驚かすにはペウーがよく、彼が試合に出れなくなるような心配に落とし入れることを考えた。あの頃ペウーは立派な髭を生やしていたのでそれを引き合いに出した。

話を合わせてから私はペウーに近づき、さも心配そうに聞いた;

「ペウーさあ、君は日本人で髭を生やしているのを見たことがあるかい?」 彼はとっさに考え、私が消極的な顔をしているのを見て、知らないと、首を振った。

私は真面目な顔して続けた; 

「そうなんだよ、ペウー。君は日本に入れないことを言わなきゃいけなくなった。飛行場で国に入るのを止められてしまうよ。髭を生やしている者は誰も入れないんだ。アジア人の厳しい法があるらしい。」

彼は始め、そんな事はむちゃだとか、ありえないとかぶつぶつ言っていた。それからシートを倒してゆったりと落ち着き、同じように髭を生やすジュニオールを見て言った。

「だけど、ジュニオールも髭を生やしているよ。僕が入れないなら彼だって入れないよ」

仲間達は素早く何か説明をするべく模索を始めた。ジュニオールはいきなりパスポートを手にすると、中の訳の分からないサインを示して、自分はこうして日本大使館から特別な許可を取って来ているだのと言った。トヨタカップに出る短い期間だからこれでよいだとか・・・・・

ペウーはそれで少し納得したような顔をした。皆は彼の足をすくうように、もう試合に出ないでそのまま帰らなくちゃいけないのか、などと残念がったりした。ああだこうだとペウーに同情したような事を言いながらそれぞれが寝てしまう。ペウーも自分の席に戻り考え込んだ。

間もなく飛行機が東京に着く頃になって、私達は起こされてペウーが居ない事に気が付いた。後ろを振り返った時、トイレのドアが開くのを見た。彼は髭の無いまだ濡れている顔したままもどって来ていた。

「君らは僕がこんなチョビ髭のためで試合に出られないなどと考えられるかい!」ペウーは言い放った。 

選手達はみんな爆笑に陥った。私は本当の事を話したが、それが日本に着いてから笑いの種になるのは考えていなかった。それはまた別の話だから次の機会に話そう。

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