ジーコの部屋

Eu quero ver gol!  俺はゴールを見たい!

フラメンゴとヴァスコの決勝だった。レフェリーのジョゼ・ロベルト・ウライチは小さなマイクを隠してピッチに入った。試合で何が起きるかを記録するためだ。現在では幾つものカメラがピッチ上を映し、マイクもあちこちに置かれていて4本の白線の中で起きる試合中のことすべてを記録できる様にしている。そしてそれがテレビにも流される。しかしそれでも本当の意味での全ては不可能だ。その理由はピッチ上にいる者にしか解からない事も多いからだ。相手を威嚇したり挑発したり、ボールが無いところでもマークしたりと、いろんな事が起きている。

ちょっとした面白い話があったのは1987年11月22日のこと。日曜日の午後、マラカナン・スタジアムには、約7万人がフラメンゴ対サンタ・クルスのブラジル選手権試合を見に来ていた。この年のチームにはゼ・カルロス、アンドラーデ、ジーニョ、まだ若手だったレナトとベベットがいた。そして私が赤黒のフラメンゴのユニホームを着た4度目のタイトルでブラジル選手権ではこれが最後になるだろうと言われていた試合だった。ラジオレポーターや、新聞記者などがひしめき、サポーターたちも重なり合って観戦していた。多くの人がこの試合を覚えていると思う。私は3得点をするチャンスを与えられその結果3対1で勝ったのだ。3得点のうち2得点は選手歴の中で最も綺麗なゴールだったと自負している。それはみんなに見てもらってもいい。フリーキックを綺麗にゴールの隅に押し込み、キーパーのビリグイにはチャンスも与えず、そして彼も身動きすら出来なかった。

だけどあの試合で誰もが見ていなかった出来事がある。あのフリーキックの時の相手チームのボランチだったゼー・ド・カルモが私の蹴ったボールがネットを揺らした後に示した反応だ。どのカメラも記録していないし、少数の者しか証人になれない。あのピッチにいた選手しか解からない。それは試合が始まる随分前からの事だ。ゼー・ド・カルモはいつもフリーキックの練習に関わってきた。キーパーのビリグイが壁を作る時にペルナンブーコ出身のゼーはボールに背を向けてビリグイを見ていた。ビリグイは顔を赤らめて怒鳴っていた。

「ゼー、前を向けよ、前を向けったら!奴はボールを置いてお前を狙っているんだ。でないと僕は落ち着かないよ」

ふざけるゼーは股間にボールを当てられるのも嫌だから、チームの仲間に冗談を飛ばした。

「オイ、ビリグイ。俺はボールを背にしているよ。日曜日にはゴールも見たいからね。どっちに入ってもいいけど、俺はゴールを見るぞ!」と繰り返し言っていた。それを何度か他の試合でやってみせてキーパーを慌てさせていた。

しかしその日曜日にはゼー・ド・カルモはキーパーのビリグイがいつも要求していたことをしたのだ。私のフリーキックに備えて壁が作られ、彼はそこにいて私を見ていた。私はキックしてから祝杯の抱擁に走った。試合後の事だが、ゼー・ド・カルモを知っている仲間達から聞いた。ゼーの反応の事だ。私がゴールを祝している時、彼はビリグイの方を不動のまま振り向いて言葉を連射した;

「ビリグイ、ビリグイ・・みたかよ!君は俺にボールを背にするなと言わなかったかい?ゴールを見損ねたよ、ジーコのゴールを見なかった!次には絶対に背を向けてやるからな。俺はゴールを見たいんだよ、ゴールを・・・・・」

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