ジーコの部屋

Drible inusitado 珍しいドリブル

サッカー、バスケット、テニス、陸上その他のスポーツをする身体に障害を持つ選手を見ると、懐かしいブランコを思い出す。彼は私が90年にスポーツ大臣をしている時に一緒に身体障害者のスポーツ推進をした人物だった。身体障害を持つ選手は、自分がスポーツの中でいかに自分の体を最大限上手く使って行くかを考える。健常者には気が付かない部分が多い。

2004年アテネでのパラリンピックの放送を見ていてもそうだった。選手達が困難を克服して漕ぎ付けたゴールラインでの歓喜の表情を見て多くの人々は感じるであろう。ブラジルの水泳選手、クロドアウド・シルバも良いモデルであった。サッカーの世界ではそのスポーツが要求する身体条件のため、プロの社会ではめったに無い事だが、アマチュアの世界では障害者がサッカーをするケースがある。その例は多く存在するが、元同僚だったユリゲラーことジュリオ・セザールが一つ話をしてくれた。

「ジーコ、一度俺たちがマスターズのチームでペルナンブーコ(州)のガラニュンの街に行って試合をした時。その時、相手チームの10番が実は右腕が無かったんだ。そのことに気付くのに我々も時間が掛かったわけだが、それがめっぽう上手いんだよ!」

ジュリオは引き続き説明をしたことには、その10番はマスターズチームに何度もドリブルを仕掛けていたそうだ。キーパーでもなく、フリーキックでも再度からセンタリングを上げる専門家でもない、まったく普通にプレーしていて誰も身体障害者とは解らなかったという。どうもその10番がやたらと動き回り、マスターズに苦労をさせているので、ホンジネーリがマークする役目になった。その辺りから話は変わって行く。あのホンジネーリの事だ、個性あるマークの仕方でガツンガツンやっていたが、ある時それが相手に通じない場面が生じた。

「ホンジは10番がすばしっこく厄介なのは解っていたんだけど、相手が中央辺りから我々のすっぽり空いてしまっているゴールエリアに直進した。そこでホンジが止めに入って前に立ちはだかるわけだが・・・」 ジュリオが続けた。

その時、意外な展開になった・・・。

「いやあ、ジーコ、10番は凄くすばしこくてホンジを抜いて行っちゃった。キーパーと1対1になったところで一回止まって、ゴールをしてしまったね。」 とジュリオ。

その話を聞いてから私もガラニュンの名人がどう言う手を使って抜けたのか知りたくなった。ジュリオも同じように興味を持っていたが、それを当人のホンジネーリが更衣室で話してくれたそうだ。

「みんな聞いてくれよ。あの10番は僕は前に出て行ったら、ボールを右に出してフェイントを掛けてきた。絶対止めてやる自信はあったね。ところがだ、反射的に腕を掴んで引っ張ろうとしたら・・・スルリと抜けた10番はその後どうしたか結果は出ているよ!」

ホンジは後でかわされた本人にも話したそうだが、笑いに落ちて説明もした。ふつうは左にかわす方が守る側にとっては難しいのだ、と。守護神、ホンジも見事にやられた訳だ。

そう言う事で、普通の人間には考えられない事を教えられる良い教訓である。頭を使って自分の身体を最大限活用すること・・・。

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