ジーコの部屋

A escapadinha こっそり抜け出し

フラメンゴの元同僚だったゴールキーパーのニエルセンとの話の中で、幾つか面白い話をこのコーナーに載せてきた。彼は本当に記憶力が良い人で、特に印象に残っているのはオリンピック予選の出来事である。‘71年の事だが、このコーナーでも話したことがある。とにかくあの当時、チームの仲間では色んな出来事が起きていた。今回もその内の一つを紹介しよう。

コロンビアに行く前の準備をしている時だった。リオのウルカにある陸軍体育学校で合宿をしていた。そう、合宿場所は軍施設の中である。みんなおとなしくしている他はないのである。

だが、いつでも何かをしたがる度胸ある者がいるものだ。心地の良い海岸でのある夜の事だった。「脱走」を試みてやろうと言う者がいた。それはアウイージオという右サイドバック選手であだ名はカネイリーニャ(か細い脛)と呼ばれていた。彼も当時フラメンゴでプレーしていた。彼はとても車の運転が上手いとはいえず免許も取りたてだった。彼は車を軍学校の駐車場の計算された位置に停めていた。アウイージオは皆が寝静まると、つま先立ちでこっそり抜け出した。

彼のアイデアは誰にも気付かれずに出入りしてやろうと言うものだった。あの抜け出しを記録されないように。そこまでは良かった。上手く行くはずのアイデアではあったが、上手く行くはずはなかった・・・。運転が下手な彼の事だ。夜遅く帰ってきて、自分では気付かずに大変な「証拠」を残してしまったのだ。本人は帰った時には誰にも見つかっていないので全て良しと寝床に入った。車もしっかりと安全な場所に隠した。

翌日は練習日で全員早く起きる事になっていた。だが、鶏が鳴く前に宿舎全体が怒気を込められた大声で起こされてしまった。

「アルイージオ!さっさと起きんか、君は私に説明することがあるだろう!」 チームのマネージャーだったカステロ・ブランコ(軍曹)が怒鳴った。

「軍曹、何かあったのですか?」 アウイージオはとぼけて聞いたが、自分に暗雲が垂れ込めているのを感じていた。

「君はよくもぬけぬけと何かあったのですか、などと聞けるなあ?君はだなあ、駐車場の車6台にぶつけて、おまけにその内の1台は学校の司令官のだぞ!!それなのに,何かあったのかと言う度胸は何なんだア!?」 マネージャー(軍曹)は怒り狂った。

横で聞いている我々は、心配しながらも笑いを堪えるのが大変だった。アルイージオがどんなに運転が下手かをよく知っているからだった。接触した車の殆どが大型車である。彼はとても楽しい夜を過して来たのだろう。

結局はアウイージオにとっては大変な出来事であった。ぶつけた車の修理代を払わされた上、司令官からは首を要求された。いよいよとなったので、私達も「軍曹」と一緒になって仲介に入ったので、何とか首だけは逃れる事がでた。

まあ、彼は相当堪えたものと思う。特に懐にね。か細い脛は「脱走」の代償は予想以上に高くついてしまったようだ。

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