日伯友好カップ

柔道ブラジル代表監督、藤井裕子さんに聞く

[2018.09.09]

元柔道選手の藤井裕子さんは、イギリス代表のコーチを経て、2013年からはブラジル女子代表チームのコーチに。自国開催となった2016年リオ五輪に向けて、ブラジル女子柔道を大きく底上げしたことで、世界的にも有名な指導者です。
現在は2020年東京五輪に向けて、なんとブラジル柔道男子代表の総監督に就任し、活躍されています。

練習に、遠征にと、多忙な日々を送る裕子監督ですが、毎年、この日本ブラジル友好カップには、家族と共に応援・観戦に来てくれます。今年もプレイベントと本大会の2度に渡って、CFZジーコサッカーセンターまで足を運んでくれました。
競技こそ違えど、世界のトップレベルで、しかも外国の代表チームを率いて戦う裕子監督に、この大会に感じる重要性や、外国遠征の意義などについて、話を聞きました。

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Q:U−15という世代で、海外遠征をしたり、海外のチームと対戦することの重要性を、どう思われますか?

A:私は小さい頃から柔道をしていて、今、柔道の監督をしているんですが、24歳になって海外へ出るまでは、海外で柔道をする、海外で自分のやっているスポーツをする、という機会がなかったんです。

で、外へ出てから初めて分かったんですけど、自分の国だけでやっているより、他の国でどんな練習をしているか、どんな心構えで試合に向かっているか、そういうことを見たり、肌で感じる、体験して感じるということは、自分のスキルはもちろん、試合に対する心構えや、心の面を強化するのに、すごくいいと思うんですね。

1つのことに囚われずに、いろんなやり方があっていいかな、という、発想の転換が出来る。そういうのを早い段階で経験しておくっていうことは、とても有意義なことだと思います。

 

Q:選手としても、指導者としても、世界中を遠征している裕子監督から見て、ブラジル、ということで考えると、このブラジルで、選手達は何を掴んだり感じたりできると思いますか?

A:やっぱり、人間性、人としてのキャラクターがすごく違います。風土も関係しているかと思いますが、サッカーをやっている人間、柔道をやっている人間に限らず、全体的に、人がのんびりしている。

日本ってどちらかというと、すべてを箱に詰めてきちきちやっていくようなイメージがあるんですが、ここブラジルではそうじゃなくて、のんびりしてても、やるところはしっかりやる、試合に向けて、勝つための練習はしっかりする、っていうのは、ここへ来てみないと分からないことかな、と思います。

ブラジルっていうのは、どちらかというと日本の正反対かな、と思うんですね。場所的にも真裏なんですけど、性格的にも真反対なところがあるんで、そういうところでやるっていうのは、ショックを受ける面もあるかなと。でも、若いうちにショックを受けておくのは、とてもポジティブなことだと思います。

 

Q:柔道でも、例えばハファエラ・シウヴァ選手なんかは、ハングリー精神の代表みたいな存在。サッカーの育成年代でも、ブラジルはハングリー精神が違う、ということを良く言われるんですが、やっぱり、日本とブラジルでは、厳しさ等が違うんでしょうか。(※柔道のハファエラ・シウヴァ選手は、スラム出身。厳しい環境で生まれ育った彼女が、裕子監督の指導を受けて、2016年リオ五輪で初めて金メダルを獲得したことは、日本とブラジルのみならず、世界中で有名な話となりました。)

A:日本って、別にスポーツで芽が出ようが出まいが、教育もしっかりしているし、それなりに生きていけるじゃないですか。別に、サッカーがダメになっても、柔道がダメになっても、生きていける。そういうところで育ち、練習している人間と、自分が柔道でダメになったら、サッカーでダメになったら、自分だけでなく、家族も生きていけないっていうようなところで生きている人間の、1つの戦いに賭ける力、エネルギーというのは、やっぱり違うものがあるなと思います。

で、その戦い方も、やっぱり個人個人で違います。例を挙げればハファエラ・シウヴァなんかは、日本式に綺麗に型にはめてしまえば、彼女の良さはなくなっていたと思うし、彼女の、それぞれの試合に対する自分の持っていき方、それは精神面でも、体力的な面でも、持っていき方が違うので、そこは、私自身も学ぶところが多かったなと思います。

 

Q:アントラーズ勢の指導者はこの大会の常連が多くて、それを毎年感じながら、その厳しさを日本でどう作るかというのを、いつも考えています。その厳しさを実現するための、何かヒントはあるでしょうか。

A:うーん、厳しさを実現するためのヒント。やっぱり、こうして外へ出て行って、選手自身が感じるというのは、大きなことだと思います。

もっと言えば、チームで来てしまうと、やっぱり全てオーガナイズされた状態で、ホテルもあって、食事もあって、練習時間も決まっているところに来ればいいだけなんですけど、もし1人でこちらにポンと来ると、また違うかなと思うんですね。1ヶ月なり、3ヶ月なり、ほんとにこっちの環境に1人か2人でポンと入ってしまうと、すごく大きな違いを感じるんじゃないかなと思います。

可能であれば今後、そういうことをやっていくのも、楽しいかなと思います。

 

Q:最後に、今この大会に参加している選手や指導者の皆さんにメッセージを。

A:これから日本を、日の丸を背負って戦っていくことになるであろう選手達、そして、コーチの皆さん。私も背負う国こそ違えど、同じ立場で頑張っています。やっぱり、同じような仲間が頑張っている姿っていうのが、私にも力になりますので、切磋琢磨して、頑張っていきましょう。


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文=藤原清美、写真=Jorge Ventura / George Henrique

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