日伯友好カップ

市川善戦、2位で大会を終える

[2010.08.20]

8月19日

 

リオデジャネイロに1週間ぶりの、雲ひとつない晴天が戻ってきたこの日、25度と気温も上昇する中で、市川の第3試合アルチスウ戦が行なわれました。両チームとも、ここまで2勝。この試合が、予選リーグのトップを決める一大決戦です。

Jogo1

 

序盤から、押しつ押されつの好ゲーム。栗栖選手がDF1人をかわして放ったシュートが、相手のファウルを誘い、市川がPKをゲット!それを、助っ人の背番号10、カイオ選手が確実に決めて、まずは市川が先制します。

Jogo2


しかし、アルチスウも簡単にはプレーさせてくれず、1点を返されて同点に。市川の方は、リオに到着して1週間、遠征の疲労がじわじわと効いてきた様子。攻め込まれる場面が増えてきます。最後は立岡監督が、「あと3分!」「あと1分!」と鼓舞する声を聞きながら、力を振り絞って戦い、1対1で前半を終了。

Jogo3

 

ハーフタイムでベンチに引き揚げてきた選手達。消耗はしていても、鈴木選手はまだピッチを歩いているうちから、時間を惜しむように監督と確認作業を始め、闘志は尽きません。

一方、3戦目にもなると、指導陣からの指示も、さらに細かくなります。今回の市川は、フラメンゴとの合同チームで大会に参加していますが、そのフラメンゴのヴァウチーニョ監督からも「ボールをキープしようとせずに、素早くパスを出そう。相手は体が大きいけれど、素早いパスで、避けることができる。」と、日本人選手達にも、具体的な指示が出ます。

Jogo4

 

後半も、惜しい場面、ピンチの場面が交互に訪れる、白熱した展開。そんな中、市川の助っ人選手が相手を後ろから削り、退場となってしまいます。一人少なくなった市川、なおも善戦を続けますが、消耗した山本選手、佐久間選手、栗栖選手が、順々に交代でベンチへ。合同チーム、日本人だからといって、フル出場が保証されているわけではありません。最後は生存競争の厳しさも体験。

Jogo5

 

同点で終わるかと思われた試合は、後半終了間際のアルチスウのゴールで、市川、1対2の惜敗。結果、アルチスウが1位、市川が2位で予選リーグを終えました。

Photo

 

試合後は、ジーコから大会参加記念の盾と「市川は素晴らしい活躍を見せてくれた。敗戦はちょっとした差だったよ。おめでとう。そして、ありがとう。」という言葉が贈られました。

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さらに、この1週間、市川を指導してくれたCFZのデラシーコーチからは、選手1人1人に、修了証書が手渡されました。


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大健闘の市川、試合終了直後こそ、悔しさでいっぱいだったものの、最後は笑顔。お疲れ様でした!

 

《市川トレセンの試合結果》
市川トレセン 1-2 アルチスウ

 

《市川トレセンからの今日のスタメン》
DF 瀧島実幸
MF 佐久間竜大、鈴木裕也
FW 栗栖魁人、山本礼利

 

今日の「収穫」

 

栗栖魁人選手

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自分なりに手応えを感じたのは、体ではちょっと負けてたけど、走りでは同じぐらいだったということ。今回の経験を活かして、日本でも、もっと当たり負けしないような体を作っていきたいし、ドリブルや、判断する速さを身につけていきたいと思います。また、日本人はあんまり試合中、お互いに意見を言ったりしないけど、ブラジル人は試合中でも、すごい指示を出し合ったりしていました。一緒にチームを組んだので、そこが良いところだと学びました。

 

カイオ選手

今回10番をつけて、市川の助っ人としてプレーしたフラメンゴ選手

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市川は良いチームだった。日本人選手の印象はポジティブなことばかりだよ。彼らはすごく良いプレーをしている。良い少年達だ。ただ、予選リーグを突破できなかったから、幸せとは言えない。僕の目標は、この大会の優勝だったんだ。でも、来年までとっておく。来年も一緒に戦って、優勝しよう。

夢はサッカー選手になること。僕のアイドルはジーコ。他にはいない。だから、フラメンゴのプロ選手になって、たくさんのタイトルを獲りたい。

 

デラシーコーチ

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今日は敗れたけれど、試合は対等だった。アルチスウはセットプレーの細かいところで勝ったんだ。アルチスウの方がもっと時間をかけて作られたチームだから、ペナルティエリアでのコンビネーションができていた、ということ。

今年の市川の参加は非常に良かったよ。ここに来た選手の人数が少なかったとは言え、クオリティの高い選手達だった。だから、フラメンゴと合同で良い戦いができた。

サッカーとは世界的なもの。日本とブラジル、ピッチの外では文化は違うし、場所も違う、習慣も違うけど、ピッチの中では、ボールが転がり始めたら、コミュニケーションも、パスワークなども、もっと簡単になったと思う。両国の選手共に、合同チームだから、特別にどうという以上に、何も問題なく一緒にプレーできたことも、逆に新鮮だったんじゃないかな。

立岡監督に感謝するよ。もう何年も市川で素晴らしい仕事をしている。そして、僕らも今後も出来る限り、市川を手助けしていきたい。

 

立岡康徳監督

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今日は強い相手とやらせてもらったのが、一つの経験だったし、最初はリードしたんで、こりゃいけるかなと思ったんですが、なかなか勝利の女神は微笑んでくれなかった。勝てなかったのは悔しいですけど、子供達が一生懸命やってたんで、見てて気持ち良かったですね。試合を重ねるにつれて、だいぶこなれてきただけに、もう少し続けてできたら、もっと良くなるはずだと感じました。

ブラジル人のゲームに対する姿勢とか、ゲームに入る前までの準備とか、そういうところは多分、日本の子供達が経験できていない部分なんですね。今回は合同チームということで、肌で感じたんじゃないかと思います。それから、サッカーに対する真摯な姿勢。1つ1つのプレーに対して、ここで一歩足が出るのか、体を1つ張ることができるのか、そういう点で、学ぶところが多かったと思います。

指導者としては、これまで例年、せっかくの機会だから、デラシーにチームを指導してもらってきたんですね。でも、昨日の練習中、デラシーが僕に「ちょっと練習やってみろ」って言うんですよ。それで、デラシーの前で僕が指導して、こういうトレーニングをしてるんだっていう意見交換をして。毎年彼と話をして、それを持ち帰っては、自分なりに解釈をして、日本の中で練習に取り入れてきたことを、理解してもらえた気がしますね。なんか、テスト受けてるみたいな(笑)新鮮な経験でした。

 

今日のこぼれ話

 

立岡監督のモットーは「Paixão sem limite(情熱に限界なし)」。

この遠征での最後のインタビューを終えた後、監督は笑顔で「ありがとうございました。これからもよろしくお願いします!」。今年の戦いを終えた瞬間から、心はすでに、来年の戦いへと向かっている様子でした。まさに、Paixão sem limite

 

<文=藤原清美・写真=Jorge Ventura / George Henrique

 

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