ジーコの部屋

Rondinelli万歳

[2008.08.09]

サッカーの醍醐味といえば何と言ってもゴールの瞬間だろう。
特に貴重な、それこそ喉から手が出る程ほしかった一点をもぎ取った時等は全員大騒ぎで感情を爆発させる。
私自身個人的に最も感動的だったゴールはと言えばLibertadoresファイナル(対 Cobreloa)の得点だろう。とにかく稀に見る大苦戦だった。ゴール自体決して美しい形ではなかったが本当に大切な一点だった。あの時の感情のほとばしりは今もはっきり覚えている。

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今回のCantinhoはこのゴールの瞬間に因んだことを書いてみたい。
最近久しぶりに昔の仲間達と懐かしい当時の話題をあれこれお互いに思いつくまま語り合うチャンスがあった。(メンバーは私とRondinelli, Julio Csar Uri Geller, Andradeと Adlio)
その中で前にも触れたがRondinelli絡みのエピソードが大ウケだったのでさらに詳しく解説しよう。
彼は現役時代、皆さんもよくご存知の通り毎回闘志剥き出しでつねに血を流しながら包帯ぐるぐる巻きでプレーするタイプの典型的な選手だった。その為サポーターからは“闘神”の愛称で呼ばれていた。実際チームにとっては本当に貴重な存在でその闘志で周りを奮い立たせ困難な局面を何度救われたことか!

彼にとって“諦め”という言葉は存在しなかった。そんなRondiの特徴が最も顕著に表れたプレーはあの対 Vasco戦の有名なヘディングシュート(1978)であろう。しかしながら我々仲間内での彼に関しての印象深い出来事といえば多少色合いが違ってくる。彼の場合当時チームの誰かが得点した際の祝福の仕方というかその喜び方が異常に過激だった。

例えばゴールした仲間に対し皆が駆け寄り、飛び付き、しまいにはピッチ上で人間ピラミッド状になってしまう状況で彼はいつも最後に上から飛び込んで来るのだ。その勢いはちょうど敵にスライディングタックルをかます様な具合である。その瞬間彼の走るコースにぼーっと立っていようものならそれこそ怪我をさせられかねない程の勢いだった!

本人はほとんど無意識だったらしいが仲間からは「Rondi,勘弁してくれよ!肘が目に入ったぞ!」
「ん?、次は気をつける」だが実際は次も同じだった。

「Rondi、膝蹴りはないだろう!気をつけろっ」

「悪かった。絶対しないから」試合の翌日はかならず誰かがRondiのお陰で治療室通いとなる。
こんなやりとりの繰り返しで数試合が過ぎたある日、誰ともなく「おい、いい考えがある!」と言い出した。

「いいか、この辺で Rondiを何とかしなきゃ体がもたない。奴は口で言ってもらちがあかないからな。そこでだ・・・」

次の試合に我々は計画を実行にうつした。
この試合苦もなく先制点をもぎ取った自分達はゴールした奴をいつもの様に祝福しに駆け寄った。またRondiもいつもの様に後から突っ込んで来た。しかしこの後がいつもとは展開が全く違っていた。

「今だっ!」 掛け声と共に人間ピラミッドが一斉に散った。そこに飛び込んで来たのが何も知らないRondiだった!何事もなかった様にそれぞれのポジションに戻る我々。 

ゲーム後Rondiが開口一番「チクショー!どうしてくれるんだ、お前達のお陰で腕、怪我したじゃないか!・・・でもまぁしようがないかぁ・・・もう二度と飛び込んだりしないから・・・」

この一言でどれだけチームが安心したことか!またバンドエイド、鎮痛ゲルの節約になったことか・・・・。偉大な Rondinelli,王者フラメンゴが誇る真の闘神だった。

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