「オスカール・シュミット」
[2006.11.29]
もし我々が今までにブラジルのスポーツ界で起きた出来事のリストアップをするなら絶対に置き去りには出来ない事がある。それは1987年の米国インデイアナポリスで開催されたパン・アメリカン・オリンピックでバスケットブラジル代表がホスト国を相手に勝利を得た出来事だ。あのチームで活躍し責任のとても大きく更にブラジルバスケットの偉大なアイドルともなった人物であるオスカール・シュミット。現在は引退しあの見事なプレーを見る事は出来ない。多くのチームのユニホームを着たが、フラメンゴでもプレーしチャンピオンにもなった。現在はサンパウロに住んプロ選手時代に出来なかった事をして過している。
“神の手”と言われる彼が今やっている事の一つにサッカーがある。そんな話をこのインタビューで明かしてくれた。
サイト:もう引退にしてから結構時間が経っていますが、それでもプレーしている夢を見たり、起きたら練習しなくてはとか思ったりしますか?それとももう過ぎた事と割り切っていますか?
オスカール:「その時期は終ったね。もう3年もコートから離れている。懐かしさは無いとは言えないしもちろんある。何せ32年もバスケットやって来たしずっとそのスポーツに没頭して来たから。色んな良い思い出もある。友情も随分培ったし楽しい事も多かったよ」
サイト:それで今はサッカーに熱中しているって本当ですか?貴方の背丈が有ればセンターフォワードかゴールキーパーでも・・・
オスカール:「そうなんだ、45歳にもなってバスケットをやめてサッカーだよ!!キーパー!?僕は狂人じゃないからね、まあ前の方だったらあまり邪魔にならないし得点もヘタすると出来るかもしれない。僕は攻撃が好きだからね。それに自分の身体の使い方は心得ているつもりだよ。それよりヘッドのゴールを沢山決めるよ」
サイト:ジーコと一緒にプレーするなんて考えた事ありますか?
オスカール:「本当の事を言って考えた事無いな。僕と一緒だったら彼が大変だよ、僕は凄くボールを欲しがるタイプだから。でもやってみたら面白いな。彼らがボールを組み立てて僕が点を取る。恐らく凄いツートップになると思うよ。僕は今遊び半分でサンパウロでチームを作った。チーム名は“オスカールとアミーゴ達”と言うんだけど、もしジーコがやりにきてくれたら勿論10番は彼の為に取っておくよ。」
サイト:ジーコと言えば、貴方はひと時フラメンゴで貴重な時間を過した。フラメンゴと言えばブラジル国内で一番サポーターの多いチームでなおジーコと言う偉大なアイドルがいるけど、そのチームでプレーするのはどのように感じましたか?
オスカール:「フラメンゴでプレーするのは素晴らしい事だった。もしフラメンゴのユニホームを着なかったら、サポーターの情熱は伝わって来なかった。彼らが唄う中に自分の名前も入る事も、ゴールにも、ネットにも、観客席にも聞こえる感動が伝わらない。もちろんヘマすればブーイングだってお構いなしに飛んでくる。フラメンゴでは4年間プレーした。経歴の中でも素晴らしい出来事として刻まれている。フラメンゴでチャンピオンになり街中をオープンカーでパレードもした。あれは特に感動だったね。何処へ行っても必ず赤黒ファンが居る。熱狂的な赤黒ファンも居る。チームに惚れ込んでいるね。一度ブラジル杯決勝戦の始球式に僕をマラカナンに呼んでくれてスタジアムに僕の名前が響いたんだ。赤黒ファンが叫んでくれたけどあれは凄かった、鳥肌が立って凄く感動したよ」
サイト:ブラジルのチャンピオンにもなった貴方が現在の堕落したブラジル・バスケットを見てどう思いますか?
オスカール:「今見て悲しくなるね。ブラジルの第二のスポーツにもなった位なのに。現在は非常に悪い時期になっている。各チームも活動を止める状況を最近見ていて本当に悲しくもなるよ。スポンサーも他のスポーツに鞍替えしたりしているしね。選手達は失業してしまうし、今はやるべき人も何もしていないという状況だ」
サイト:NLB(我々のバスケットリーグ)について話してくれますか?改革への挑戦について、貴方は今のリーグについて満足出来ますか? オスカール「満足出来るね。“我々のバスケットボールリーグ”は一つの誇りだ。初年度から僕等は男子も女子も大会を組織する事が出来た。それは最初に考えていた目標よりはるか上で、大会も競合率が高くて内容の良い試合が多かった。大会も上手く運営できて国内南から北までのチームが集まることが出来た。勿論まだまだ改善するべき点は多いけど、2年目にはバスケットでNLBが勝利を得る年にしたい。」
サイト:貴方はNBAでもプレーする機会がありましたがあの頃セレソンに参加する意義を認識していた。現在では状況も違うがブラジルのレアンドリーニョやアンデルソンにネネもあちらで頑張っている。こうした良い選手が海外でプレーしているのに国内でのバスケットが良くないのをどう考えますか?
オスカール:「僕等には人材には不足しない。優良な選手もいます。彼らはNBAでもヨーロッパでも注目される選手です。だけど、組織に欠ける。最後の国内選手権にはチャンピオンもいなかったし、メディアも参加しない、スタジアムに試合を見に行く観客もいない、チームも無くなって行く、下部組織の活動も放置状態、などなど兎に角間違った部分が多すぎる。スポーツに対して何をしたら良いのかを言うのでは無く、やる気になる事がまず大切だと思う」
サイト:もし貴方が魔法のランプに対して特にバスケットについて一つお願い事が出来るとすれば何をお願いしますか?
オスカール:「僕は一時的にバスケットの時間を止めて貰う。それでバレーボールがしたような企画、組織編成、環境と専門家(プロ)の参加などを取り入れて見たい」
サイト:貴方は現在国内バスケットを見ていて貴方のようなアイドル的選手が生まれて来るのを見出せますか?ここ暫くバスケットのアイドルが欠けているようですが。
オスカール:「僕はブラジルバスケットで自分のやるべき役割は果たしたつもりです。僕の時代ではマルセールとか他のメンバーがしたのと同じようにね。それ以外に例えばローザ・ブランカ、ウビラタンや沢山の選手達もそうだった。現在ではネネ、レアンドリーニョにアンデルソンらが居てNBAに属しているけど、若手には彼らがアイドル的な存在になっている。彼らはそう言う部分を上手く利用して僕等のスポーツの為になって欲しいし、若手にも良いモデルにもなって貰いたいのだけどね」
サイト:貴方がバスケットでの大きな鏡となっているのは疑問もないこと。どんな形でもスポーツの困難を打開するために協力が出来ると思いますか?
オスカール:「何とかバスケットの為になる方法を模索している。僕とパウラもそうだし、オルテンシアも一緒になってね。それをとりあえずNBLで生かそうと考えている。いつも我々はこのスポーツに協力できるような態勢ではいます。バスケットはいつも僕を必要としているし僕はそれに背を向けることは出来ない。」
サイト:最後のジーコにメッセージを贈って下さい。彼も向こうで読んでいますから。
オスカール:「ジーコ、世界の幸運は君に対してのものです。君はピッチの中でも外でもモデルとなる人物です。ブラジル全国民が誇りに思っている人物であり、僕もフェネルが総てのチャンピオンになる事を願っている。オスカールの抱擁を受け止めて下さい。その内に出来ればペラーダもしましょう」