ジーコの部屋

Suzuki e Gentil 鈴木とジェンチール 

[2006.08.10]

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久しぶりにコラムに戻れた。まだ日本での事が思い返される。もうトルコに来ていろいろな事も起こり始めているけどね。今回の為に取っておいた話がある。兄のエドウーが話していたことで、ワールドカップでは通訳がベンチに入れれないと言うFIFAの発表についてである。しかしそれは解釈の仕方次第であり、結局のところ鈴木通訳は私の横にいたのだ。この問題がまだ疑問視されている時に、日本で永く時間を共にした偉大なる私の友人・鈴木は面白い言い方をしたものだ。 

「僕はベンチの後ろにいてメガフォン使うよ!」と言った。  
彼が思いついた解決策にはスタッフみんなが楽しんだ。鈴木は知らないままにブラジルサッカーで歴史に残る偉大なる人物が練習にメガフォンを使っていたのと同じ考えが浮かんだのだ。それは誰の事かと言うと、ジェンチール・カルドーゾという人のこと。個性的で結構面白い話をする事でも有名だった。コラムでも敬意を表して主役になってもらおう。ある時ヴァスコを出てフルミネンセに移った時に彼が言った事は「アデミールを譲って欲しい、そうすれば我々はチャンピオンだ」。そして」トリコロール(フルミネンセ)はアデミールを契約して取り、後の結果を言うまでもない。良く言われる「ヴァイ・ダール・ゼブラ(大穴が出るぞ=意外な結果になる)」などは彼が作ったものだ。 

他にも面白いフレーズが多くあるが、エドウーが絡んだものを取り上げてみよう。エドウーがまだプロになったばかりでアメーリカにいる時だ。ジェンチールは結構いい年で記憶力も幾分弱くなってはいたが、突拍子もない可笑しいことをよくやった。 

リオ・ペトロポリス街道18kmでアメーリカが合宿をした。正確にはそこにあるグラウンドでアメーリカが次の試合に備えて練習をしていた。エドウーに依ればそこは周りが凄い薮ばかりで選手の殆どが恐怖を感じていた。蚊やら色々な昆虫が飛び交ってウオームアップをしながら選手は気になってしょうが無かった。さて、そんなある日メガフォン片手にしたジェンチールが何やら画策した。エドウーは主力チームに混ざって週末の試合に出るレギュラー争いに汗を掻いていた。日も傾いて薄暗くなる頃には雷が鳴って変化した。エドウーはその時の様子を語った。  
「エリアの外からのボールを受けたんだ。ドリブルを試みたが、躓いてデフェンダーと一緒に転んでしまった。驚いたことに監督はファウルを取った。エリアのライン上だったよ」 
エドウーのチャンスだった。その時ジェンチールは近くに寄っていた。壁の位置を指示してキックはOK出すまで蹴るな、と言った。ピッチはもう暗くなっていて、エドウーはそれでも点を取る大きなチャンスと向かい合っていた。ジェンチールは準備万端と確認してからアクションに入った。 
「チオン・バレット!!コブラ(FKキック)を良く見ろ!!」 と、メガフォンを手にヴォリュームをアップしてある選手に怒鳴った。    
  
壁は一目散に走り出し、ゴールキーパーも走り出していなくなった。 

「エドウー!!ボールを蹴るんだ!!早くしろ!!」      

ゴールをするのは簡単な事だった・・・。だが兄貴は・・・   
「もう足ががたがた震えてしまってボールを蹴るのさえわからなかった。チョロ球で外れたのは当然だよ・・」   
エドウーは決められなかったが、嵐がやって来てそれどころではなく練習を取りやめてしまった。ジェンチールは一人で大笑いして止まなかった。選手等は未だにコブラ(キック)を見つけられずに居る。 

注:ブラジル語でコブラ(cobra)はヘビのこと。サッカーでFKになった時コブラール・ファウタと言う。コブランサ=取り立てる、要求するなどのコブラールと言う言葉から来ているがコブラは動詞で変化している。             
                 

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